新冠林道が閉ざされて久しくナメワッカ岳は日高の中でも最奥に位置する山と言えるだろう。
どっしりとした山だが日高に憧れを持つ者にとって無視できぬ存在である。
ルートはカタルップ沢〜神威岳〜新冠川エサオマン入ノ沢〜新冠川〜ベッピリガイ沢〜同ナメワッカ岳西面直登沢からの往復である。
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9/19カタルップ沢はよく滑るが登って楽しい沢だ 9/19神威岳のやや東に外れ背丈程のハイマツを漕ぐ 9/19神威岳から新冠川南面直登沢のガレを下る
9/19 戸蔦別川林道を進むと新しく設けられたゲートの前に数台の車が止まっている。
カタルップ沢までは2kmちょいだから30分程の歩きだろうか。
道脇に草を敷詰め設営に取り掛かるとタイミングよくSAさんが到着した。
久々に懐かしい函館弁を聞かされると普段忘れかけてた言葉がポンポン自分の口から出るのが不思議だった。
星が瞬き明日からの天気を約束している。
9/20 晴れ時々曇り 5時に林道を出発する。
カタルップ橋からまだ光の届かぬ薄暗い沢に入渓すると岩の上に濡れた靴跡が付いていた。
初っ端から良く滑る一枚岩の滑床に神経を使い遅めのペースで先頭を歩く。
F1にザイルが垂れ滝を登ってるパーティーがいたが我々は左岸から巻いた。
リーダ格の男性に何処から来たのか尋ねると札幌のガイドでこれから陵線伝いに幌尻岳までと言うから驚いた。
お客は女性ばかりでリベンジ企画とのことだが果たして結果がどうだったか知りたいところである。
この滝を過ぎると小滝がばんばん現れ面白くなってくる。
自分は2年前の記憶が新しく新鮮味に欠くが初めてのメンバーは興味深々といった様子である。
ほぼ順調に二つの大滝を越えて源頭が近づくと流石に疲れが出たかSOさんが遅れ出す。
藪漕ぎなく陵線に出たまでは前と同じだが30m程東に外れて少しハイマツを漕ぐ。
神威岳初ピークのIさんに先頭を譲り、4度目の頂きから秋深まる展望を楽しんだ。
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9/19新冠川エサオマン入ノ沢下流域の淵をへつる 9/20新冠川エサオマン入ノ沢中流域の滝場をへつる 9/20藪を漕ぎエサオマン北カール全景を振り返る
神威岳から新冠川の源流域を見下ろすとエサオマンから派生する尾根との間にいく筋もの深い谷が刻まれている。
これから下る南面直登沢もc1300までの混んだ等高線さえ凌げば後はC1予定のベッピリガイ沢出合まで単調な河原歩きだろう。
さて眼下の源頭をめがけ急降下を始めと200mもしない内に水が流れ、c1500で右岸から水量の多い沢が合流すると左岸からもう1本合流する。
傾斜が増し両岸に岩壁が迫ってくると何が出てくるか気が気でならない。
何度か降れぬ滝を巻いた他は小滝が連続する忙しい沢である。
今度はだらだらしたゴーロでさっぱり下がらぬ高度計が気になる。
ふと左岸から小さな支流が目に入るがエサオマン入ノ沢上二股(970m)と思わず確認しないまま過ぎてしまった。
出合はまだか?いくら歩いても出てこない筈である。
エサオマン北カールから流れる沢があのしょぼい水量には思えず何とも釈然としなかった。
c950mのカーブを過ぎると両岸が狭まってゴルジュになり2m程の滝下が釜になっていた。
右岸の滑りそうな岩から高巻いて沢身に戻るとまた新たな釜滝があり再び巻いた。
更にしつこくゴルジュが続き深く大きな淵の右岸をへつって通過する。
このときSOさんが滑って背の届かぬ淵に没しずぶ濡れになった。
ただの河原歩きと思っていたがまさかのゴルジュ帯の出現に時間をロスし疲労が重なる。
テン場を探しながら歩くとc900mの川原に適地を見つけテントを張ったが予定よりだいぶ手前である。
残念だが此処をベースにナメワッカ岳の往復は無理で明日の撤退を決める。
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9/20・c1760m陵線に飛び出る あの辺で間違ったかな 9/20陵線から見える札内岳の紅葉が見事である 9/22初めて秋の北東カールに下る実に素晴らしい
9/21 晴れ どうせ今日はエサオマン入ノ沢の途中から1563南コルを乗越し帰るだけだとのんびり出発した。
すぐ昨日の核心だったゴルジュ帯に差し掛かり今度は一気に巻いて越える。
沢身に降りる時に滑り台のような岩をへつらねばならず高所を苦手とするSAさんが気の毒だった。
見過ごしたエサオマン入ノ沢上二股出合は倒木が入口を塞いでいた。
この沢に入るのは初めてだが暗い入口を抜けると明るく開けた滑滝が続いて快適だった。
c990の左岸から地図にない斜滝が入り目に鮮やかな緑の苔に見惚れる。
c1000は3:1の二股で本流の先は滝とゴルジュの様相を呈しぞくぞくさせる。
そしてc1050で2:1の顕著な二股を左に取るとゴルジュのどん詰まりに10mの垂滝が落ちていた。
さてどうして越えようかと逡巡する。
左岸の草付き斜面を高巻くにはあまりに急でずっと下がれば大高巻きもできそうだった。
結局ロープを出して右岸から巻きゴルジュと滝壺を足下に見ながらトラバースして滝口近くに降りた。
途中の潅木に捨て縄があったが大高巻きした時に懸垂で使ったものと思われる。
何れにせよこの沢で一番の核心を通過し安堵する。
沢は大岩が転ぶゴーロとなり誰か降りてきたなと思ったら知った二人連れだった。
さてこのまま戻るのも何なのでSOさんを説得しエサオマンに登って札内JPか北東カールに泊まることにした。
水が早々に涸れ、c1250mで補水しザックの重さが増す。
c1380mで大きな二股が現れ左に入ると前方に北カール、振り返ると幌尻岳と戸蔦別岳が望まれた。
北カールに入るのは初めてで嬉しく先ほど聞いた話では踏み跡があるらしい。
ところがどう間違ったかカールの左にそれてルンゼ状の急な岩壁が眼前に現れた。
高みに登って確かめるとカール底の雪渓から200m程離れているが正しいルートの確信が得られない?
カールに入って二股は無かったし途中にカラビナが落ちていたのも判断を迷わせた。
戻ってルートを探すかこのまま突き進むかだが駄目もとに近い後者で意見が一致した。
ルンゼから潅木を頼りに登ってくと広大な北カールの全景が見えてくる。
迷った場所から少し戻れば踏み跡があったかに見え少し悔しい思いがする。
潅木とハイ松に苦んで登り切った陵線は山頂の肩から400mほど神威岳寄りで錦秋の札内岳が綺麗だった。
踏み跡を辿りエサオマントッタベツ岳山頂から少し下のテンバをC2とする。
つい先ほどまで遠く見通せた日高の峰々に滝雲が流れ幻想的である。
そして雲に浮かぶナメワッカ岳にリベンジを誓った。
9/22 曇り ガス中だが昨日の朝ほど寒くなくのんびり身支度してテンバを後にする。
北東カールに下ると紅葉がピークを迎え素晴らしい眺めだった。
カールに流れる冷たい雪渓水で喉を潤し休憩する。
滑を下って暫くしてc930mで本来下降する予定だった1563コル沢を確認する。
小さな沢だがこれを使えば半日は短縮になると思われた。
目的だったナメワッカ岳は未完遂で終わったが新たな沢を二本繋げそれなりに充実した山行でした。
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<翌年のナメワッカ岳リベンジはこちら>