天頂山&羅臼岳(南西ルンゼ) 1046m・1661m 厳冬期 (羅臼町・斜里町)  ■Home
            2012年3月3-4日 知床峠ルート メンバー7名
            3/3 天頂山 9:45自然センターゲート→(12:00-12:30)c550mC1→(14:10-14:25)天頂山→14:55C1
            3/4 羅臼岳 7:15C1→8:15知床峠→9:35c1020mシーデポ→(10:50-11:00)羅臼岳→(14:15-14:55)C1→15:50自然センターゲート

知床連山の盟主(羅臼岳)に出来れば厳冬に登ってみたい。 南西ルンゼは冬期閉鎖されている横断道路からダイレクトに頂上を目指すルートで日本登山体系には西ルンゼとも記されている。 一般的に道路が開通するGWに登られることが多いが静かな知床を満喫すべくこの時期に計画した。 ただ冬の半島は風が強烈で、一昨年は現地まで行って強風で断念した経緯があり気が抜けない。 今回は一日目に天頂山、二日目に南西ルンゼと少し欲張ってみたが、願わくば快晴の山頂から半島を眺めてみたいものである。

冬期間閉鎖中の知床横断道路を勇躍出発する     7kmほど先の静かなタンネに囲まれた小屋に到着   891ポコを天頂山だと思い込み足取りが軽かった・・  

〔3/3 天頂山 曇りのち晴れ〕
知床まで、前夜札幌から車を飛ばし半日掛かりで横断道路のゲートに到着する。 天気は上々!スキーで出発すると雪が締まって20cmくらいのラッセルで済んだが 全装を担ぎ変わらぬ景色の道路を歩くのは辛かった。 くたくたになって7kmほど先のタンネに囲まれた小屋を見たときは正直ほっとした。 若干不調の2名を残し、すぐさま空身で道路を出発すると青空の下に真っ白な山が見えてくる。 「あれが天頂山か!あっと言う間に登れそうだ」 ルンルン気分で取り付くと目にしたのは891ポコで山頂はずっと奥だった。 カンバの疎林を抜けるとシュカブラのハイマツ帯となり、 アイスバーンの複雑な紋様が風の強さを物語っていた。 クトーを付け尾根通しにガシガシ登って山頂に立つ、 テレマークの一名は難儀したのかシートラになり遅れてやってきた。 南西の展望が開け、陵線通しに真っ白な知西別岳と遠音別岳が連なっている。 下には結氷した羅臼湖、更にオホーツクの流氷と知床らしい雄大な景色に感激する。 それにしてもこんなに風が強いとは・・・明日の南西ルンゼが思いやらる。 その羅臼岳からは雲が取れ、深く刻まれた絶壁なみのルンゼに背筋がゾクゾクした。

本物の天頂山が見えてきたがなかなか近くならなかった 初ピークの天頂山から知西別岳と遠音別岳を展望する  羅臼岳南西ルンゼは絶壁の様で背筋がゾクゾクした

シールを外して堅く波打つ雪面を滑るのは大変だったが小屋に戻ると二人が雪掻きと部屋を暖かくして待っていた。 その晩はジューシーなジンギスカンと大量に担いだお酒を楽しんだ。 酒が進むと「明日は羅臼岳を止めて知西別岳にしたらどうか?」との甘い言葉につい流されそうになる。 若いころ山で迷って夜中に下山したと言うメンバーの話に聞き入る。 話の落ちが天人峡のストリッパーに奢ってもらったラーメンだったのは涙が出るほど可笑しかったが、 ちょっとした人情ドラマのようでホロリときた。 そんなこんなで酒が切れ21時就寝する。


〔3/4 羅臼岳南西ルンゼ 晴れ時々曇り〕
風の音が気になりつつ少し寝坊して5時前に起床した。 外はまだ暗く、飲み過ぎの不調者が若干いるがうどんを食べ粛々と身支度を整える。 明るくなると少し青空も見えてきたが羅臼岳はすっぽり雲が掛かったままだった。 山の中腹から雲が湧き出しては飛ぶように流れて気が気でない。 出発を1時間遅らせ「それじゃ行ける処まで行ってみよう」と言うことで昨日のトレースを辿った。

夏には賑わう知床峠も凍てついて寂しい限りだった   知床風の洗礼を受けながら緩やかな山腹を進んだ   アイゼン・ピッケルでいよいよルンゼに取り付いた

道路の積雪は1.5mを示しているが風の強い場所はアスファルトが出ていた。 地の涯にふさわしく荒涼とした風景の中にポツンと“知床峠”の碑が建っている。 これよりクラストしたガリガリの尾根を登って行くと風が一層強く、 目出帽とフードを被っても顔が痛くてしょうがない。 指先が痺れてきたので予備のオーバーミトンを重ねて履いた。 振り返ると横断道路がくねくねと山腹を這うようにうねり、 羅臼岳からの陵線が天頂山、知西別岳、遠音別岳へと続いているのが遠望される。 オホーツク海はびっしり流氷が埋め尽くし、根室海峡は沖合いに流氷が広がってその先に国後島が見えていた。 自分がいま知床半島のど真中に居るのを実感させる光景である。 ルンゼは中腹にある出べそのような岩が目印で、 ガリガリボコボコの雪面にスキーを走らすが1020mでアイゼン・ピッケルに替えた。 幸いルンゼが近づくと雲が上がって風も弱くなった感じがする。 しめた行けそうだ!そして1300mからルンゼの登攀が始まった。

斜度は45度以上に達しピッケルを握る手に力が入った  傾斜がきつくなる中間部からは出っ歯に命を預ける  気の抜けぬまま約300mの急斜面を一気に登攀した

ルンゼの標高差は300m以上で見上げると巨大なジャンプ台の様にも見えるが 上部はガスってよく分からない。 登り出してすぐ斜度は45度に達し中間部の喉の辺りが一番急で股下から登ってくるメンバーや下の風景が覗ける。 そして先行するメンバー二人の氷の粒がばらばらと落ちてくる。 風は収まったが次第にアイゼンの前歯しか効かずピッケルを握る手に力が入った。 ルンゼの途中で休むことも許されず緊張が続いて疲れる。 最上部で右岸岩陵寄りにトラバースすると傾斜が緩み出してほっとした。 やがてシュカブラに覆われた山頂らしき大岩が見えてきたが、違う山に居るようでピンとこない。 岩塔を廻り込んで狭い頂に立つと10m以上の強風に晒されすぐ下の窪地に逃げ込んだ。 気温-17℃、ガスで展望が無いのは残念だが満足感がふつふつと湧いてきた。

大きな山頂台地に一段突き出た羅臼岳ピークに到着する ルンゼを下るとやがて眼下に見事な展望が広がった   青空のもとすっきりした羅臼岳に見送られました

さて急いで腹ごしらえしたら気掛かりな下山が待っている。 恐る恐るルンゼを降ると幾らかアイゼンが効いてきたが滑落したら間違いなく下まで行ってしまうと思うと緊張がピークに達する。 急な処はバックステップで一歩一歩慎重に下って、下界が近づくと展望を楽しむ余裕が出てきた。 流氷に囲まれた半島の眺めは素晴らしく「さすが知床だぁ〜」と何度も口にするメンバーがいるほど見事である! この時期にしてはまずまずの天気で念願叶い満足する。 温泉に寄るとメンバー二人の顔が風にやられ狸のように目の周りが黒くなっていた。笑・・・

<大きな写真はこちらからどうぞ> 





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