ヌビナイ川左股川北面直登沢(クマの沢)〜トヨニ岳〜トヨニ川右股沢 (大樹町・広尾町)
                       トヨニ岳北峰1529m・トヨニ岳南峰1493m  地図はこちら  ■Home
 2012年8月10日N-13日 メンバー3名
 8/10N 小雨 21:30翠明橋公園C0
 8/11 曇り 7:30C0→7:50二股橋車デポ→移動→9:15正徳右岸林道終端出発→(11:05-14:05)函→14:35C1・c590
 8/12 晴れ 5:00C1→(8:55-10:05)8段90m・c990→(12:40-13:00)トヨニ岳北峰→14:10トヨニ岳南峰→14:50(ペンギンカール)C2
 8/13 雨  4:20C2→6:45トヨニ川右股合流→10:55左岸林道→12:40二股橋

         
週末前から雨になりこれから帯広方面の降雨量が際立っていたが直近になって週末が晴れと曇りに変わった。 既に山の保水力は限界に達してるものと思われこれ以上の雨は許されない、 またヌビナイ川が増水して入れない可能性もあるが取り敢えず現地確認の基本にのっとり駄目元で出発することになった。

クマの沢に入って程なく花崗岩の白い函が続く    函の終盤は滝場が多く少し渓相が変わってきた    c586出合い過ぎテンバ、焚き火が出来て幸い          

 10日N(金) 雨 Iさん宅に車をデポし2人で浦河に向うと日高門別辺りから遂に雨が降り出した。 21時過ぎ翠明橋公園に到着、雨は止んで誰も居ないあずましいトイレ小屋で安着祝いを始める。 寝入りばな7名やってきて飽和状態に、屋根を叩く雨音が気になりつつ再び眠りに付いた。

11日(土) 曇り 早朝目を覚ますと老若男女入り乱れての雑魚寝姿に驚いた。 外はガスってるが晴れの予報に期待する。 メールを見ると昨夜、函館を発ったSさんが新冠の道駅で仮眠を取ったとのこと、 到着までのんびり朝飯食って身支度する。 暇なのでニオベツ川の様子を見に行くと濁ってやや増水していた。 7名組も沢装備になってるので尋ねると野塚岳から十勝岳まで一泊とのことだった。 ほぼ予定時刻にSさん到着し下山ルートについて打ち合わせる。 月曜は再び天気が崩れる見込みなので確実に下れるトヨニ左股川に変更することにした。 車を一旦はトンネル出口にデポしたものの未練たらしく引き返し予定通り二股橋にデポし直すことにした。 初っ端から行ったり来たり、右股を下るか左股かその時の天気判断と言う訳である。

          
二日目、序盤は小滝が続き軽快なテンポだった   大雪渓と滝に阻まれシビアな高巻きを強いられる   巻く途中で次の滝と、新たな雪渓が見えていた          

数年振りに正徳右岸林道を進むと終盤道が荒れ終端の数百m手前で車をデポする。 ヌビナイ川は少し濁ってるが目立った増水は見られずほっとした。 ほどなく左股のクマの沢に入り坦々と広いゴーロを行くと倒木にタモギタケが鈴なりだった。 やがて沢幅が狭まりc460で大きな雪渓を抜けると花崗岩の明るい一枚床が現れてくる。 いよいよ長い函の始まりだが何せ水量が多くまともに中を行けない。 徒渉が腰までありもたつく始末、 この調子では先が思いやられるとの判断で一旦断念したが気をとりなして遡行再会となった。 函が延々と続き、滑床・滑滝・釜の連続だが堪能する余裕は無く、 余計なへつりや高巻き、徒渉に気を遣った。 S字の屈曲部、ちょうど支流が集まるc520に大量のデブリがあり上を行く、次の雪渓は中を行った。 函の両岸から次々に滝が落ち、 ピリカヌプリ南東面直登沢の出合いを過ぎると目に見えて水が減ってひとまず安堵する。 出合いから数十m先の右岸にテントを設営、 沢のすぐ傍でやや心細く「山と谷」と同一場所か定かでないが周囲に適地はなかった。 湿った木で火を起こし、焚きたてのご飯とタモギタケの味噌汁が夕食、お焦げが美味い。 水が徐々に減水している。 暗くなると狭い谷間の上に星が輝き、漸く青空が見れるかと思うと気分が高揚してくる。 「よーし!明日は一気に山頂踏んで下山しちゃいますか」 「そしたら明日の分の酒も飲んで軽くするべや」と意気上がる。 だがその10分後にはSさんが焚き火の横に突っ伏していた。 20時揃ってテントに入る。

          
 雪渓に挟まれる様に10m前後の滝がばんばん出てくる  多くは水流を行けず脇から登るが抜けが厭らしい  この沢で最大25m二股の滝、ザイルを出して草付き登る          

12日(日) 晴れ後曇り 3時半起床、晴れている! 暫しゴーロを行くとc640で門の様な暗い滝を持った支流が入る。 すぐさま大きな雪渓が現れ上を行く。 c730二股は滝が合流し屈曲した滝を越えると上に快適な斜滝が続く。 見上げれば左の高所より一条の大滝が流れ込み、いよいよ核心近しを予感させた。 c780で長さ100mの大雪渓が塞がり右岸から雪渓に上がると白糸状の滝が左岸に大きな穴を開けていた。 空中に張り出したブリッジをビクビクしながら左岸に渡り、 草付き斜面を微妙なトラバースで十数mの滝を高巻いた。 沢身に戻ると続けざま10m前後の滝が現れ水流行けず脇から登る。 c870三俣で再び100mを越える大雪渓、上がると前方に白い垂滝がはるか上まで幾重にも連なる壮絶な景観!あれを行くのかと思ったら支流で幸い。 ここには右股からも三連の大滝が入りどこもかしこも凄い景観である。 雪渓のどん詰まりには同じ様な十数mの滝があり左岸草付きをトラバースして高巻く。 そして25m二股の滝を越えると本流も負けず劣らず8段60mの連滝が岩壁に刻まれ圧倒された。 「山と谷」では60mとあるが下から見えるのは5段までで全体なら100mはある超大滝である。 ここは中尾根から一気に高巻けるらしいがSさんがザイルを引いた。 一段目の抜け厭らしくハーケン打つ、二段目、三段目必死・・下を見るとどんどん高くなっていくが感覚麻痺してくる。 六段目で全身シャワー浴びる、次から次と息つく間もなく1時間以上掛かって八段目を抜けた。 振り返ると風景が広がるがまだまだ滝が連続して気の休まる暇がなかった。 ようやく沢が細り小滝群を越えると1400m弱で水が涸れ、ザックが少し重さを増す。 詰めの藪は薄かったがヘロヘロになってトヨニ岳北峰に到着、今日中に下るなんて甘い話だった。 予定通りトヨニ岳南峰経由でペンギンカールへ下ることにする。 南峰からカール底に直接コンパスを切ったためネマガリが酷かったが程なく沢形の先にガレ岩の積み重なるカールが現れた。チングルマの綿毛が揺れ、あちこちからナキウサギの声がする静かな楽園だった。 焚き火の跡と小さなテン場があり、焚き木を集めたが上手く着火せず諦める。 オコジョがテントの近くでちょこまか顔を出し愛嬌を振りまいていた。 春雨スープが夕食、疲れてお酒進まず18時揃って就寝、昨日より暖かかった。

          
8段60mの連滝、圧倒される光景を前に緊張高まる   核心が終わってもまだまだ続く滝登り、食傷気味   5度目のトヨニ岳北峰は今までで一番疲れました          

13日(月) 雨 3時前に起床、外はもんわりガスに包まれている。 旨くすれば昼まで雨が持つかも知れず、 足元が明るくなるのを待って下山する。 沢形を辿るとすぐ水が出て小滝をどんどん下り大きな滝はサクサク巻いた。 10m位の滝でザイルを出してると何と早くも雨が降り出してきた。 この沢最大2段50mの大滝は両岸切り立ち幽玄な雰囲気を醸し出している。 支点に新旧捨て縄あり懸垂下降する。 遂に雨が本降りに・・・まだ先が長く気が焦る。 トヨニ川右股沢に合流すると幾つも雪渓が出てきて手こずり、一度高巻いてザイルを出した。 水が濁ってくると釜の深さがよく分からなくなる。 滝をクライムダウンしたあとチャッポンの積りが背の立たない深さだったり、 泳ぐ積りで飛び込んだら浅くて顔をぶつけるなど笑いの一幕もあった。 大木が累々とする巨大なデブリが4箇所あり綺麗だったこの沢が終わったような気がした。 思いのほか長く辟易するころ漸く踏み跡が現れる。 途中Sさんのちょっとしたアクシデントもあったが無事乗り切り、泥だらけ濡れ鼠で二股橋に到着した。 車を回収して天馬街道を飛ばすと雨足が一気に強まり、あのまま沢にいたらと思うとゾッとした。 雨で何度も危ぶまれながら完遂できたのは奇跡的だったかも知れない。 頼もしいメンバーに感謝する。

          
3日目、二段50mの大滝、幽玄な雰囲気の滝である  トヨニ川右股沢では雪渓とデブリに時間を食わされる   滝場の下降が大変、釜が意外に深かったりする


















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