トムラウシ川の上流に位置し幻の渓谷と呼ばれる地獄谷を訪ねるのは初めてである。
話によるとテント床はオンドルのようにポカポカ暖かく濡れた衣類も翌朝までには乾くらしい。
ここをベースに各支流を探検したり釣りや手掘りの露天に浸かってのんびりするのが楽しみだ。
今回は3連休を利用して地獄谷で二泊し初日に五色沢〜スゲ沼沢、翌日はワセダ沢〜ヒサゴ沢を遡行する計画である。
特にワセダ沢はかつてクワウンナイ川、ヌビナイ川と並びかつて北海道で3本の名渓に入ると某誌に紹介されたというから外されない。
9/21金(雨)
夜札幌を出発するが雨足が強くトムラウシ前泊を止め剣小屋に向った。
小屋にはツアーらしき先客数名が就寝中だが荷物が散乱している。
どうにか寝床を確保しひそひそ安着祝いを始めると「静かにしろ」と怒られ早々と就寝する。
9/22土(晴れ)
5時半に小屋を出発し7時過ぎトムラウシ温泉に着き身支度する。
いざ装備を分担し出発する段になってコッヘルを忘れた事に気付くが今更どうしようもない。
カムイサンケナイ林道を14km程走ると西沢手前の枝沢で道が決壊し車を止め残り4kmを歩いた。
終盤は林道が荒れ決壊が直ったとしても普通車での進入は無理である。
林道を離れ川音に向って下るとトムラウシ川は昨日の雨で増水気味だった。
巻き道をフルに使い徒渉に手こずる以外は単調な遡行が続く。
やがて左岸に赤茶けた岩盤と滑が連続しヒサゴ沼からの支流出会いを過ぎると先方に立上がる湯気が見えた。
硫黄の臭いにワクワクしながら近づくと左岸一帯から蒸気が噴出し川床の至る処から湯が湧き出している。
巨大な湯の花の熱塊を上がるとふかふかの草地で良いテン場だがひんやりして聞いた話と少し違った。
他を見渡しても取り敢えず此処が一番良さそうである。
すぐ奥にも大量の蒸気が上り行って見るとボッケから泥湯を湧き出し熱気とガスで息苦しい。
後背地は裸地でガスのせいか木が全く育ってなかった。
さて五色沢の探検に行こうと誘うが皆気乗りしない様子で釣りをして遊びたいと言う。
結局沢に行かず釣りと焚き木集めに奔走するが釣果は無く流木も少なく苦労した。
4時頃に札幌E山岳会のパーティがやってきて対岸にテントを張る。
挨拶がてら「昔は熱くて堪らなかった思い出があるが今日は寒いですね〜」また魚が釣れず下流で仲間が粘ってると言う。
川辺の露天も水が入り過ぎてダメだし今日はたまたま条件が悪かったのだと納得する。
夕闇迫るころメインディッシュを欠いた野菜だけの天麩羅を揚げながら祝宴を始める。
沢に冷やしたビールを取りに行ったH氏の絶叫が響きいったい何事かと一同顔を見合わせた。
戻ってきた彼は照れながら近道をしようとして泥湯に片足を突っ込んだと言う。
沢靴は履いてたがスパッツを外したばかりなのでくるぶしから上が赤くなっていた。
直ぐ沢水で冷やせと言ったが当の本人は痛くも痒くもないといたって暢気な顔をしている。
幸い濡れたズボンだったから直接熱さが伝わらなかったようだが一歩間違えれば大事故だった。
ほっと胸を撫で下ろすと同時に可笑しさが込み上げマンガみたいな話だと一同大笑いした。
温泉卵とさとうのご飯はブクブクに入れると旨く出来きマーボ春雨を作って食べた。
急に冷え込んで寒くて堪らず焚き火は明日に持ち越してテントに入った。
外は満天の星で明日の好天を約束してるようだ。good night!