敷生川(シキュウガワ)の支流だからヒショウガワかと思ったら国道に飛生(tobiu)の看板が掛かっていた。
アイヌ語で「ネマガリの多い所」「黒い鳥の多い所」という意味らしい。
地形図に滝が一つもない沢だが「ゴルジュの沢で死体発見」というショッキングな報告が気になり出掛けてみることにした。
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320mの林道出合いまで極力巻かずに突破しようと思う。
taniさんと竹浦駅で待ち合わせ2台で出発するが林道工事のためc300mにデポ、予定を220m右俣に変える。
その右俣が先日ふーちゃんが死体を発見した場所らしい。
勇んで出発したいところだが生憎の小雨に気温が18℃と低くテンション下がる。
しかも橋から入渓するとやけに水が冷たく、前日の雨の影響か水もやや濁っていた。
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早々と砂防のお出迎え?と思ったら川幅いっぱいに広がる3mの滝だった。
これを超えると2O0m以上も続く広い滑と苔生す節理の岩壁が圧巻、なかなか見応えある景観だ。
薄いピンクのツリフネソウ(釣舟草)は後ろに突き出た渦巻が面目い、黄色のキツリフネ(黄釣舟)とコラボで群落を成していた。
そして右岸高所から落ちるスラブ状の大滝をじっくり眺める間もなくゴルジュ帯に突入する。
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入りロに立ち塞がる大岩を真ん中の隙間から這い上がると高さ10m弱の奇妙なゴルジュが続いていた。
両岸から冷たい水が垂れ、中から靄が上がって何ともぞくぞくする光景である。
磨かれた茶褐色の岩盤は全般に手掛かりが薄くしかも脆い凝灰岩で剥がれ易い。
へつり、泳ぎ、段差の様な小滝越え、これの繰り返しだが水に勢いがあって結構時間が掛る。
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日射しが無くカッパを着て遡行する。
時々クリーム色の明るい岩とコバルトブルーの淵にうっとり、かと思うと白濁する水路に戻るなど忙しい。
緊張しまくるhiropon「そこは無理、巻きたい」という声を無視してぐいぐい引っ張る。
中を行く方が早いし、巻いたら簡単に降りる場所がないので勿体ない。
流石にへつりも泳ぎもどうもならん所を一ヶ所巻いた。
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果てしなく続くかに思えたゴルジュも終わりを見せる。
距離的にそれ程でもなかったがやけに長く感じられ、漸く一息付ける場所で腹ごしらえする。
休むとたちまち寒くなるので続行、だが水に入ると冷たくてぶるぶる身が縮む、カワガラスだけが元気よく飛び交っていた。
ここは暑い日に限る、晴れたら水がもっと青々しているだろうに残念だ。
すぐ先に160mの二股(写真右)が見える。
意外に近かったがもうこんな時間だ、出合いは5m程のスラブの滝で奥に門の様な涸滝が見えていた。
漸く雨が上がって明るくなると蝉が鳴き出して日射しを期待する。
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そこからの本流は沢形がやや小振りになるがいろいろ変化が出て面白い。
苔が一段と美しく、腰の深さでくねくねと浅い水路が続く。
このまま穏やかに収束かと思ったら再びゴルジュになる。
だが先程までの暗いイメージはなく数十mに渡って両岸からすだれが降り注ぐ緑の回廊になっていた。
水の冷たさはこの伏流水のせいで人が全く入らない場所だけに苔の瑞々しさが際立っていた。
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次第に狭く屈曲し背の届かぬ深みが幾つも出てくる。
雨でも降ったらたちまち増水しそうな沢だ。
まだ水に勢いがあって樋に足を置くと流されそう、短い足を突っ張って進む。
一ヶ所深みにあるCSを小さく巻いたら程なく沢が広がり、ああ終わったなという感じでメンバーの顔に笑みが戻った。
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嬉しいことにゴルジュを抜けると再び長い滑が現れる。
ひたひたと柱状節理を眺めながら220m右俣へ、ありふれた渓相がつまらなく感じる。
不意に死体のことを思い出して南無阿弥陀仏と合掌、途中の崩れたガレ沢を登って車に戻った。
hiroponが「今迄で一番濃い沢でかつ綺麗だった」と感想を述べ、taniさんも大満足した様子。
釣人しか入らない沢だからどんなものかと思ったが苔の美しさとゴルジュの楽しさは一級品、だがそんなに甘くない沢である。
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<翌日の 大星沢遡行〜望岳の滝 はこちら>