冬のバリエーションの一つ、岩稜の連なる北尾根(北陵)は高度感たっぷりの北壁を間近に楽しむ好ルートとのこと。
すぐ行ってみたいが計画する度に天気に振られ4度目、2年越しで足を運ぶことができた。
記録は少ないが大方のパーティーが玉石川の中腹に泊まり、北西尾根を下降に使っている。
初見の自分もこれで良いと思うが経験者に言わせると日帰りピストンで十分とのこと、これに従って計画を立てる。
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斜里豊里の道路脇にテン張る。朝まで車が一台も通らない静かな場所だった。
水餃子鍋とポテトサラダでお腹を満すと、maさんが20時前にダウンして21時に揃って就寝した。
翌朝3時半起床、ラーメンを食し出発の準備に掛かる。
外でぼやぼやしてると手が悴む寒さだった。
テントキーパーを決め込んだkiさんを残し5時過ぎ30cm弱のラッセルで出発する。
雲の掛かった斜里岳が随分遠くに見え、まだ薄暗いせいか何となく気が重い。
林道入口の牧柵ゲートはいつもならスキーを脱がなきゃ越えられないと言うから今年はかなり積雪が多いようだ。
広い斜里岳の裾野は帰りに登り返しを覚悟するほど平坦で長く、林道をショートカットして漸く玉石沢に入る。
少し雪が深くなってきたが構わずすっきりした感じの沢中を行く。
源頭近くなってガスが取れだし、門の様に立ちはだかる北壁が見えてきた。
何だか凄い所に来てしまったという光景である。
振り返ると青空のオホーツクに流氷が広がり、そして沢中にも日が射してきて気分を高揚させた。
ただ雲が飛ぶように流れ、稜線に舞う雪煙を見ると半端な風でなさそうだった。
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源頭のどん詰まりから稜線までスキーで上がる予定だったが硬いバーンに雪が載ってる状態なのでc1050でシーデポする。
150mほどEPで登った稜上は風が強く玉石沢側をトラバースしながら進む。
小槍の手前の凹地で一休み、背後の真っ白な海別岳と流氷に見とれる。
次第に足元にはゾクゾクする高度感が伴ってくる。
ふと見ると玉石沢の対面に北西稜を登ってる人を見かけるが単独のようだった。
そして大槍を斜上して越えるとついに山頂が視界に入る。
ここから山頂まで残り200mもないがあまりに真っ白な岩稜に気押される。
よく見ると2つ目の岩塔にザイルを延ばしてるパーティーがいて苦労しながらリードしてる様子、下の二人は寒さで貧乏揺すりしているのが分かる。
雪でハイマツ・潅木が全て埋まり、聞いたイメージにほど遠い。
これでは登っても、下降するのはかなり危険と判断し撤退を決めた。
先行グループを眺めながら暫し休憩、支点を取るのに手間取っているのかセカンドがなかなか登らず見てるこちらの方が痺れを切らすほどだ。
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無念の撤退だが諦めが付き
「今回たまたま条件が悪かった。あんなに苦労しなくても十分登って降りられる」との言葉が救いである。
流石に道東遠征は遠くて大変だがリベンジしたいと思った。
時間に余裕が出来たのでスキーデポ地から稜線近くまでパウダーを求めて登り返したが、
雪の状態がころころ変わって思い通りの滑りは出来なかった。
ふと北稜を見上げると先ほどのパーティーがまだ次の岩塔にいて、あのペースで大丈夫だろうか?下手に取り付かないで良かったと胸を撫で下ろした。
平坦な裾野だが車まで滑って戻れ、kiさんがテントを畳んで待っていた。
ふと後の斜里岳を振り返ると優美な山容と恐竜の背のような北稜に声が上がった。
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