寿都幌別川〜遡行 (寿都町) 地図はこちら ■Home |
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知る人ぞ知る「寿都幌別川」は両岸切り立つ函地形が続き、険悪な狩場山の須築川に倣ってミニ須築とも呼ばれている。 かなり前に遡行図を貰ってずっと暖めていたが改めて見ると函・滝・ゴルジュがびっしり並び、「泳ぎ」「苦しい」等の注釈が書き込まれている。 幌別川とはアイヌ語で「大きな川の意味」だがはたしてどんな沢かちょっと覗いてみることにした。 |
気温19℃、最高気温は25℃の予想、水に浸かったら寒いだろうなと思いながら道駅を出発する。
車で10分も走ると荒れた林で車高のあるkaさんの車なら大丈夫そうだが新車なので歩く事にした。
一の沢出合いの入渓まで約30分のウォーミングアップで、これが良かったのか思ったほど冷たく感じない。
ただ前日の雨で水量がやや多く、岩の濡れ具合を見るとまだ減水中って感じである。
凡々とした渓をものの10分で函に浸かり、更に函を通過すると沢中ににょっきり橋桁が現れた。
これは昭和初期の残骸で地図に往時の林道が破線で示されているが、
橋脚はまだ半世紀以上持ちそうな堅牢なものだった。
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左岸に苔生す簾の滝を見て、二ノ沢を過ぎると急に廊下の様な函地形が現れる。
両岸の高さは十数m、真っ暗なゴルジュを想像したが日が射し込んで少しほっとする。
中をゆったり水が流れ、滝から落ちる飛沫がミストとなりマイナスイオンをタップリ浴びせてくれる。
腹まで浸かりながらこの先いったい何が出てくるのかワクワク探検気分で進んでゆく。
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美しい苔の回廊に感嘆の声が漏れたのも束の間、景観を楽しむ余裕などなくなる。
初めは腰や腹の深さだが小滝が現れるやすぐ背の届かぬ深さになる。
この函中に連続する段差や数mの滝がこの沢の核心で醍醐味だった。
高巻きは不可能、へつりもままならず腹を決め泳いで突破を試みる。
だが半端でない水圧に押し戻され、一筋縄では行かない滝越えに疲弊する。
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この沢には極端な悪場や険悪さがないものの、
ピリ辛な滝と泳ぎ場が次から次と出てくるのでボディブローのように効いてくる。
左の6m釜付2段は凝灰岩の細かなホールドを頼りに半身を浮かせじわじわ滝下に近づくのが大変だ。
流れに逆らってスタンスを見つけ這い上がろうとすると冷え切った脚が攣りそうになった。
右の函滝もちょっと抜けの厄介な滝だった。
水中から這い出て右岸をへつり滝口に足を置くのが微妙、水の勢が強くて苦労する。
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一つ目の函の廊下が終わって閉所感は薄らぐが小滝の突破は相変わらず大変である。
そして三の沢を過ぎると再び両岸高く迫って二つ目の廊下が始まった。
こんどは見たこともない狭い回廊がくねくね続き、薄暗くちょっと不気味である。
数mの高さに流木が引っ掛かっているのは増水時の高さだ、
ここで突然ゲリラ豪雨でもきたら一気に海まで運ばれるのだろう?ぞっとする。
二つ目の廊下も浸かりっぱなしだが、やがて両手両脚で突っ張っれる程の狭いゴルジュ(右)に変わる。
今まで無我夢中で突き進んできたが少し空も開けて緊張が和らぐ。
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四の沢が近づくと一時平穏になるがすぐ背の立たない淵や滝越えの難所が続く。
寒さですっかり覇気の無くなったkaさんにカッパを着せもう少し頑張って貰う。
苦労するゴルジュの滝も誰か一人が突破できればパーティー全体として勝ちになる。
何度も押し流されては口惜しがるTaさんだが体が冷える前にお助けでさっさと登って貰う。
そしてc280で暗いゴルジュが出現するとその奥に釜付き三段の滝が飛沫を上げていた。
三段目は5mの垂滝で右岸壁に取り付くが乏しいホールドと白濁した釜を見て躊躇する。
こうなったら気持ちが負けて駄目だ、
ゴルジュの入口まで戻り左岸の急な泥付きを高巻くことにした。
潅木にセルフを取って低く巻くが所々に岩盤が混じりなかなか曲者だった。
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taさんが暖かいスープを振舞ってくれ、そしてkaさんの震えも落ち着きホットする。
最終目的の五の沢はもうすぐの筈だがこの場に及んで泳ぎ、倒木や滝越えが続く。
正直言ってもうお腹いっぱいだが天然の造詣とも言える光景が興味深い。
穴の開いたチムニー滝3mは泳いで取り付き、穴からずりずり這い上がって滝上に出る。
そして開けた二俣に出ると左から滝が支流になって合流し、
ゴールの五の沢に着いたなと思ったがGPSではもう少し先だと言うので更にゴルジュと小滝を登ってゆく。
するとやっぱりさっきの場所でした・・・とのことで引き返して休憩する。
ここは整地すれば良いテンバになりそうだが虻が煩くて快適に過ごせるかはなはだ疑問だ、
五の沢の水を飲んで早々と退散することにした。
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下降は補助ロープを多用し、ザイルも数回出す。
釜が深いとみるや積極的に飛び込む。
支点は流木が使え、三段滝には古い残置も残っていた。
登りでは澄んでいた水も降りは川底が見えないほど濁って、
これで滝やゴルジュを下るのだから結構時間を食ったと思ったが出渓したら夕方近くで驚く。
今朝はあまりにヒンヤリでぐずぐずしていたがもっと早く入渓すべきだったと反省する。
昨夜はいっぱいやりながら「この次は幌別岳892.3mまで登ってみるべ」と威勢良かったがそんな元気も何処へやら。
行きも帰りも浸かりっぱなしでヘトヘトだがアクティブで満足感いっぱいになれる沢だった。
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