須築川遡行〜狩場山  (せたな町・島牧村)  地図はこちら  ■Home
2011年8月下旬 メンバー3名
8/27 晴れ 5:05須築橋→5:30砂防→6:45熊追の沢出合→9:55S字峡入口420m→13:15S字峡出口550m→16:20・720mC1
8/28 晴れ 5:40・720mC1→7:20三股780m→(11:15-11:45)狩場山山頂→13:40新道下山口

長年の目標だった須築川(すっきがわ)をibaちゃんと決行することにした。 須築川は道南の盟主狩場山から日本海に刻まれた渓谷で日本百名谷の一つに数えらている。 その美しさはともかくゴルジュや滝が連続し泳ぎとシビアな登攀が要求され道内トップクラスの難しい沢として有名である。 核心部のS字峡は撤退が困難と聞くが無事に抜け出ることが出来るだろうか?。 フレッシュなS君は勿論、メンバー全員がダッシュ三つの沢が初めてで不安もあるが自分を奮い立たせて行ってみる。

          

   
 8/27 晴 前夜、新道登山口に車1台デポし須築橋の駐車場でC0する。 翌朝5時、粛々と言葉少なに須築橋を出発する。 左岸には作業道が途切れ途切れに砂防まで続き、須築川が広い川原の中に申し訳程度に 流れて願ったり叶ったり。 朝陽が眩しく気分が高揚し、砂防を過ぎるとブナの緑が川面に映り、グリーン一色でとても綺麗である。 イワナの沢に続いて熊追の沢までは平坦で溜まりに足を入れると黒い影がいっぱい走った。                    

          

   
190m出合いを過ぎ小函を初泳ぎすると徐々にこの沢が本領を発揮し出す。 220m二股までは胸まで浸かったり足の届かぬ深い釜を幾つか泳いで越える。 釜の中にはまるまる肥えた尺物のアメマスがぐるぐる泳ぎ、一度浅瀬に追いやったが惜しくも逃げられた。 やがて白い一枚岩の岩盤が続き日高のヌビナイ川のように渓相が明るく、 水が澄んでエメラルドグリーンの釜がとても綺麗である。          

          

   
300m二股正面に十数mの垂滝が見えはっと息を呑むが進むのは左で一安心。 ところがこの左股は「ようこそ須築川へ」とでもいうか暗い廊下の入口だった。 泳いで抜けると休む間もなく小滝・中滝が続きショルダーやお助けを出し合いながら進む。 冷や冷やしながらへつりで滝口に抜けたり、 大岩が鎮座するチェックストンを攀じるなど目まぐるしい展開で忙しい。 「そういえばさっき、チェックストンに抜け穴なんてあったっけ?」と聞くと、 ibaちゃんが「確か横に穴らしきものがあった」と答えたが夢中で越えたというのが実感である。          

          

   
尚も廊下が連続するが序盤は割と明るく、水の流れが作った自然の造形を探索するようでそこそこ楽しい。 ただこの先いったいどうなってるの?と思いながら泳ぐのは精神衛生上あまり気持ちのいいものでない。 S君の防水カメラが早々機能不全になり、 自分のカメラ1台だけで少し寂しいものがあった。          

          

   
360m二股から再び沢が開け、つるつるした函滝を幾つか越える。 水の吸ったザックを背負ったままだと足掛かりのない釜から這い上がれず消耗する一方だ、 ここは一旦戻って空身で上がる。          

                     

   

   
そして420m二股に要塞の如く聳える柱状節理(写真左上)が現れ、いよいよ核心のS字峡が始まった。 ぞくぞくしながら右股へ進むと程なくF1〜F3三段の滝だ、F1(写真右上)は直登不能でibaちゃんが空身でリードする。 左岸のルンゼを8m登ってテラス状へトラバースし沢身へは残置シュリンゲを使って下る。 ルンゼの登り、トラバースとも緊張するが見た目ほど悪くない、ザックは吊り上げ吊下げする。 F2は釜を泳いで取り付きそのまま直登、F3は左岸をトラバース気味に登る。 少し歩くとF4函奥の滝(写真右下)である。 「山と谷」に載ってるやつで狭い廊下を10mほど泳ぎ、その先の樋滝を突っ張りで登った。 S字峡の両岸は恐ろしいほど高くこれらの滝を高巻きで回避するのは不可能と実感する。 ただこの日は沢中に日が届き想像したほどの暗さがなくて幸い、 いつの間にか水の冷たさにも慣れ、血が騒ぎワクワクする興奮を抑えられない。          

                     

   

   
釜持ちF5(写真左上)は左から6m登って滝上に出るとすぐ後ろにも釜持ちの垂滝F6(写真右上)が続く、 右岸側壁を8mほど登ると残置ハーケンとシュリンゲがあり滝の落ち口に斜めにザイルで下る。 そのまま釜に振られそうで微妙だが何でも使ってワイルドに行く。 その後、泳いで取り付く釜付の滝と、チムニー登りの滝を越えると暗渠の先に 「ヤカンの底」と言われる直登不能の垂滝が見えてきた。          

          

   
この滝は三方を岩壁に囲まれ閉塞感も暗さも一流、岩角が水に磨かれ全体的に手掛かりの薄いところがヤカンの底と呼ばれる所以だろうか。 ここはS君やる気満々なのは良いがやや勇み足で装備不足のまま取り付こうとする。 体制を整え左岸のカンテ沿いに格好はともかく登り切り合格である。 続いて空身で取り付くと見た目以上にしょっぱい4級+、上がるとS君のビレーはやや頼りなく手直しする。 ザックを2つ吊り上げるとibaちゃんがザックを背負ったまま登る気でえらく苦労している。 流石にこれでは歯が立たず空身で登ってきたがかなり消耗した様子である。 兎にも角にも難所を越え内心ほっと胸を撫で下ろした。          

          

   
空は少し開けてきたが滝と淵の泳ぎはまだまだ続いた。 F8チムニーの滝は右岸のぼこぼこ岩を登る。 次は大きな釜の先にあるチョックストーンの滝だF9(写真左)、 ザックを背負ったまま10m泳いで取り付くが空身でなければ突破できぬ手強いやつだった。 戻ってS君と交代すると彼は水中メガネを付けクロールで水流を突破し這い上がった。 なかなか頼もしく、お助けをもらいザックを順に吊り上げる。  S字峡が終わって一段落する570m二股をテン場の予定としたがまだ時間が早いので先に進むことにした。 すぐF10ハングの滝(8m・写真右)でこれは高巻くしかないが両岸高く見るからに厭らしい。 右岸のルンゼを詰め、そこからザイル引いて滑る草付きを登った。 バイルを突き刺しながら途中の潅木でランニングを取り後続二人に上がってもらう。 更に立ち木を目指して斜上しずりずり沢身に戻った。 手応えある高巻きに40分ほど掛かりグッタリ疲れる。 F11釜付6mは左岸を巻いて少し行くと後ろにも6mの滝がありこれも巻く。 滝上から下を覗くと岩の模様がニシキヘビでF12だと分かり直登すれば良かった。 F13は側壁をへつって滝左を直登する。 そろそろ疲労で限界を迎えようかという所だがテン場になりそうな平地が見つからない。          

          

   
前方に大滝が見え、これ以上テン場探しで贅沢は言ってられない。 c720mの右岸に猫の額程の平地があり土木工事でテン場にする。 さっそく流木を集めて焚き火をするとなかなか快適な幕営地になった。 最近ibaちゃんが懲っているビリー缶を使った料理が楽しみだ。 小さい缶で米を炊くとおこげが程よくついて塩だけでもいけそう。 大きい缶にはたっぷりの野菜とベーコンを詰めコンソメでぐつぐつ煮込む、 芋が煮えたところで美味しいポトフの出来上がり。 トマトの色合いも良く沢でこんな洒落た料理を食べれるとは思わなかった。 生干しイカになってしまったスルメでちびちびやり20時過ぎシェラフに入ると両足がつって切ない。 初めてツムラ68番、芍薬甘草湯なる漢方を飲んだら効き目抜群で3時まで熟睡する。          

          

   
 8/28 晴時々曇り 今日も朝から快晴で気持ちが良く、まったくこの二日間は素晴らしい天気に恵まれた。 5時半テン場を出発し地図にある二段の大滝(15m・5m)が近づくと流石にでかくて圧倒される。 「この滝は快適に登れる」を信じて空身でザイルを引くとなるほどそこそこ困らぬ程にホールドがある。 ところが数m登った処で手を掛けた岩がガバッと剥がれ少しテンションが落ちてしまった。 滝口左に抜ける積りだったが直上して岩棚にハーケンを打ち、二段目を巻いて滝上に出る。 どうもすっきりしないルート取りになってしまったがこれで全ての核心が終わったと思うと嬉しさと一抹の寂しさが込み上げれくる。 滝の上は大きなプールで見晴らしが良かった。          

          

   
中小の滝や滑滝、階段状の滝が続いてまだまだ楽しませてくれた。 よほど自然が豊かなのか上流では日本ザリガニを多く見かけ、 ちび助ながら捕まえようとするとサソリのようにハサミを振りかざすきかない性格である。 やがてゴーロ帯になると水が枯れ、時々透き通った溜まり水で喉を潤す。 急な沢形がかなり上まで続いて標高を稼ぎ、沢形が切れると同時に潅木帯になる。 背丈ほどのハイマツなど30分のアルバイトで登山道に飛び出した。 須築川を無事に完遂できた達成感はひとしおで同行したメンバーに感謝しつつ夏道を下った。          


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