ピラトコミ山(東面直登沢〜南東面沢)遡行 1587.9m  地図はこちら  ■Home
2008年7月下旬 晴れ 登り7:30 下り6:10 メンバー5名
コイカク川出合林道4:00→c640m(10m超連滝)5:30→c960m(雪渓20m超大滝)・8:45→ピラトコミ山(11:30-12:00)
→c1010m・14:05→c900m(40m超大滝)14:30→c690m(8m滝)15:55→c650m(2段10m滝)16:55→コイカク川出合い17:30→〜同林道18:10 (休憩含)


13時札幌を出発し中札内のスーパーで買い物して18時札内ヒュッテに到着する。 札内ダム側のパーキングにテントが二つ並べられていたが小屋は我々の他に先客1名だけで落ち着けた。 明日のカムエクで300名山達成の同宿者は沢の経験が殆ど無いらしく八ノ沢がどんなところか気になるようだ。 ここから日帰りとは凄い体力の持ち主だが脱兎の如く山に登って楽しいのだろうか? まあ人それぞれの山があり満足すれば良いことである。 小屋のトイレは取っ手の位置が悪く下手すりゃ閉じ込められるから要注意である。 私もそのおじさんも出れなくなって臭い匂いの中で冷や汗掻かされた。

ビラ・トコム・イ 和語で「崖の・こぶ・所」       c580、釜と雨後の水量が遡行の邪魔をした     c640m、滝の連縛帯だった!大高巻き必須である
「東面直登沢」  3時前に先客者のガサゴソする音で起きると彼は熊鈴を鳴らし元気に出発して行った。 小屋の片付けと身支度を済ませトンネル1本抜けたコイカク沢出合まで車で行って歩き始める。 直ぐに小さな東面直登沢との出合いだが入口は幅4m足らずでブタ沢の感が漂う。 平坦でダレた小沢を歩き砂防ダムを3つ越えると程なく岩床が出始める。 小滝や倒木を越えて行くと次第に両岸が高くなり沢が左に曲がる手前から小ぶりの函滝が続いた。 はじめの4m釜付は左岸を小さく巻いたKさんよりザイルを貰い、次の4m釜付は素直に水中から直登してザイルを出した。 普段ならザイルなど不要と思われる滝だが先日の大雨の影響かやや水量が多かった。 僅か2-3mの小さな滝でも釜が深くてはすいすいと登れない。 思いのほか時間がかかりはたしてこの先核心を越せるかふと不安がよぎった。
沢が右に曲がる辺りから左岸に崖が目立ち滝記号の手前で直登不能な10m超の大きな滝・c640が落ちていた。 上にも屈曲した滝があり木に覆われ全貌は見えないが山の高さから推し量って相当高そうだった。 左岸から高巻きを続け2段目の落ち口を探ってると何ともう一つ3段目の滝があるではないか! これも合わせ結局c710で沢身に戻るまで25分を要す大高巻になった。
やれやれ一息付けるなと思ってると今度はゴルジュとなり核心が始まった。 倒木の掛かった6mの函滝・c850は抜けが滑りKさんよりザイルを貰った。 試しに履いたと言うゴム底シューズが調子良いみたいだった。 次の3m滝でシュリンゲを垂らすといよいよ険悪なゴルジュ1段目、釜付の滝6mを前にする。 上のゴルジュは右に屈曲して先が不明だが正面高所のルンゼから絹のような滝が中に落ちていた。 水飛沫の上がる暗いゴルジュなんぞ見ただけで入る気がしない。 しかもその先には間違いなく滝がありそうだった。 さてどうする?

ゴルジュ連爆帯へ突入!c850倒木の滝  入るのさえ躊躇うゴルジュ1段目の滝6m    抜けが厳しいゴルジュ2段目の滝4m、更にこの上に3段目6mが目に留まった          
滑りそうな滝を二度登りかけては戻るKさん、 今度は右岸を高巻こうとするGさんだが進む先に無理があり降りてきた。 腹を決め滝口まで登って流木を掴んでみると手ごたえがあり右の岩を手掛かりに上がった。 ザイルで登った後続も全身ずぶ濡れで日陰のゴルジュは寒くて堪らなかった。 さて次はゴルジュ2段目、釜付の滝4mを突破するのが問題である。 滝口から勢い良く水が溢れ左から取り付くが滑って直登を許さない。 左岸2m上にテラスがありここから高巻くしか手はなさそうだ。 先に上がったKさんが何度も躊躇しながら漸く登ってほっとする。 この取り付きは岩が微妙に外傾しており左下に滝壺が目に入るからいい感じがしない。 高巻く途中で更にゴルジュの中に3段目の滝があるのを知り合わせて巻いた。 やれやれc850からc890まで僅か40mのゴルジュ連爆帯を抜けるのに1時間半も掛かってしまった。
沢身に戻ると前方に大雪渓とその奥に20mはある大滝c960が見えている。 久々に空が開け一時のオアシスを思わせる場所でお日様がなんとも気持ち良い!  雪渓に上がって左岸から50mほど直上し笹を掴みながら大滝を巻いた。 長いトラバースで体力を消耗し初めて休憩らしい休憩を取った。 左岸高所のルンゼから幾筋もの白い流れが大滝へと落ちスケールの大きな景観である。 今までの閉鎖的な空間から開放されたのは良いが今度は急峻な地形が待っていた。

ゴルジュを抜け大雪渓を前に一先ずほっとする   c1000の三股はどれも急峻で滝のオンパレードが始まる   初ピークに5つのメットが並ぶ、疲れる山だった
c1000の三股は真ん中に20mはある岩壁を挟むように合流している。 対岸に見える白い筋は右股で・1508へ突き上げる急峻な流れである。 中股がその少し先に小さな水流を覗かせているがどれも容易な進入を許さぬ険しさだ。 我々は左股に入るのだがこのまま進んではあの岩壁を登れないので手前より右岸を巻いて沢に入った。 急なスラブ状の小滝郡が200mも続き水の流れる岩を直登したり潅木を攀じったりぐいぐい高度を上げた。 いつもなら尽きぬ滝に嬉しい悲鳴を上げてる筈が今日は正直もう勘弁してよって感じである。 やがて水が痩せc1250で枯れると沢形からやや外れたのか残り200mで泥付きの斜面に変わった。 滑るわ滑る、一歩足を延ばせば半歩後退し堪らずバイルを取り出した。 それまで順調だったメンバーのペースもガックリ落ち辛抱しどころだ。 ようやく稜線に出ると意外にも明瞭な鹿道が延びており山頂へすんなり着いた。 三角点の周りの笹を刈ってどかっと腰を下ろし束の間の休憩をとった。 山頂から中部日高山脈の展望を期待したが潅木が邪魔してせいぜいカムエクが見えるだけである。

「南東面沢」  下りは地形が不明瞭で分り難くGPSフル稼働で何度も地図を出した。 背丈程の笹薮は歩くより尻滑りした方が早くc1400まで下って漸くはっきりした沢形が認められる。 地図でc1300付近にある一本筋は狭い岩盤が露出したものでよく航空写真で草に隠れた地質まで判るもんだと感心した。 c1200付近で沢筋が顕著となるが下に大きな岩場が現れ潅木帯から巻いて再び沢筋に戻るとc1000で漸く右からの水流とぶつかった。 草に覆われ足元の見えない沢筋の下りは厭だなと思ったが程なくすっきりした岩盤状の流れに変わった。 急な滑滝でザイルを2回ほど使ったが小気味よく小滝を下れたまにちょこっと巻く程度で下降を続ける。
c890のつるっとした滑り台の様な滝は下が相当落差がありそうで不用意に近づけない。 左岸からザイルを使って滝口まで降り下を覗くと50mはある末広がりの岩盤状の滝だった。 怖くて降られそうもないと思ったが乾いた岩の割れ目を探りながらクライムダウンし途中から左の支流に逃げると案外楽だった。 すぐ下の15mの滝は左岸を巻き更にすぐ下の幅広い岩盤の滝30mもクライムダウン可能だ。

  c890末広がりな岩盤の滝50mを下降する      c800こちらも広い開放的な岩盤の滝30mだった    ザイルは登り5回、降り8回使う,c640で最後の懸垂
大小さまざまな滝に恵まれ登ればきっと面白いと思うが下降は初見のせいもあり酷く神経を使う沢だった。 両岸が僅か2-3m程のゴルジュ状で先が見えぬ淵になっても兎に角下って行くしかない。 ある時は倒木に乗っかりまたある時は手で突っ張り滑りそうな局面は草でも何でも掴んで全員必死である。 c690で下れない10mの滝を懸垂で下った。 この頃になると少し余裕が出て「この滝を登るとしたら如何する?」など言い合うようになる。 登るには両岸高く厳しい高巻きを要求されそうだった。 すぐ下に連続する釜が見えザイルを出して偵察すると緩い2段の滝だったがフリーで下るにはちょっと難しい。 「もう滝なんかいらねー」と言う間もなくまた連続する釜が見えたがザイルを出すのも億劫だし支点も無く右岸を巻いた。 もう何にも無いだろうと思ったら最後にc640で10mの滝だった。 ここは懸垂で下ったが登りは左岸のルンゼを使えそうである。 コイカク川を挟んだ尾根は目と鼻の先なのだがほとんど最後までゴルジュ形が続き気が抜けぬ沢だった。 14時間の遡行は胸一杯、腹一杯、ピークも踏め充実感で一杯になった。 小屋に戻るとかのおじさんも無事にカムエクから戻り素晴らしい眺望に満足されたようだ。 明日、中札内まで歩いて帰るというから脱帽するばかりだった。


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