山名はペテガリ川(アイヌ語で回遊する川)の源頭にあることに由来し、日高山脈で一二を競う魅力的な山である。
ピークは積雪期と無積雪期に三度踏んでいるが沢からの登頂は初めてだ、
しかも函と滝が連続するペテガリ沢の評判は高くワクワクする。
写真は積雪期の中ノ岳からのもので山頂に向かって右に回り込むように刻まれた沢筋がペテガリA沢である。
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朝3時に待ち合わせ車一台で現地に向かった。
まさか先日の大雨で不通になった林道が復旧するとは・・崩落箇所をやり過ごし感謝・感謝でニシュオマナイ川の車止めに到着する。
乗越しの沢は少し荒れているが地図なしでも歩けるほどピンテで一杯、2時間40分でペテガリ橋から入渓した。
ただのゴーロも水が透き通ってすこぶる綺麗だ、そして10分もしないで函地形が始まった。
函の中は水量が多く、また先日来の暑さとは打って変わって涼しくヘツリ主体で進む。
そして次々に出現する釜や淵の美しいこと、沢中に日が届いてとろんと澄んだ水に心が癒される。
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程なくc425mで黒光りするゴルジュのどん詰まりに白濁する6mの滝、轟く滝音に気押されながら右岸側壁を伝う。
もしかして今のが険悪な函滝ってやつ?
淡い期待はすぐに消えほんの二百m先に二段10mの直登不能な滝が構えていた。
手前の大きな岩くずは崩壊した斜面の残骸か、以前はもっと楽な高巻きだったらしいがペテガリ沢で一番の核心になったと聞く。
さて左岸に高巻き箇所を探すが岩壁ばかりが目立ち、ルンゼから小尾根に取り付き灌木を頼りに登ってゆく。
尾根と言っても足下がすかすかするほど立って心許なく、中程に痩せたリッジが出てきた。
既に落ちたらただ事では済まない高さでルートミスかと思いながらも行くしかない。
そして脆い草付きを騙し騙し登ると最後の一手が届かず空身で這い上がる。
そこから笹をトラバースして懸垂で沢身へ、着地はちょうど落口の釜を超えた所だった。
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なおも閉塞感のある函地形が続くが次第に岩が白っぽくなってくる。
次々に現れるエメラルドグリーンの釜滝が美しく、これらはへツリ・泳ぎ・棚・巻きで超えるが数が多くていい加減疲れる。
滝は精々数m台だが釜が何れも深く岩がツルツルで水から身を上げるのが大変、交代しながら突破してゆく。
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c530の右岸からすだれ状の支流が降り注ぐ、手が痺れるほど冷たいが以後、沢が広がり水が少しぬるむ。
ベッピリガイ山からの支流を過ぎ、沢の曲がりに釜持ちの滝が二つ、滝口は数mと低いが門のように沢を塞いでいる。
手前は左岸のスラブ状を、奥も左岸からザック吊り上げで登った。
沢は再びゴルジュになって美しい函釜(写真中)を泳いで抜ける。
なかなか時間の掛かる沢だ、夕暮れ迫るころc610左岸の小さな平地にテントを張った。
焚火で服を乾かし、米を焚いて野菜豊富な夕食を頂く。
21時過ぎ流れの傍で星空を見ながらごろ寝したが朝は寒かった。
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二日目:3時半起床、雑炊を食し5時半出発、午後から崩れるとのことだが青空も見えまずまずである。
朝一番にする仕事でないなあと思いながら水に浸かって釜を超え、更に幾つか釜滝を通過して函地形を抜ける。
暫くゴーロを歩いてデブリと倒木のB沢出合いで一休み、そこから30分でA沢出合だがここも倒木が目立っていた。
右の支流の方が広く開け、やや薄暗い感じの左へ進む。
中は意外にすっきりした滑の岩盤に小滝がちょこまか続き、沢が北に向かうc820からは10m前後の滝がテンポよく連続して気を良くする。
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沢の前方に高所から水を垂れる大きな滝が見える。
いよいよきたなと思ったらc900の支流にある滝でほっと胸を撫で下ろす。
だが本流の左に入るなりこれまたデカイ滝が奥に控えていた。
近づくと4段40mほどの大滝で右岸の草付きを高巻くがヌルヌル滑る岩盤と浮石であまり良い感じではない。
やはり滝と付かず離れず巻くべきだったと思いながらザイルで上の灌木帯に抜け、古びた残置の上から懸垂で沢身に戻る。
滝上はくねくねした滑の斜滝になっていた。
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大滝を超えると両岸切り立つV字に滝が連続し、久々に見る日高らしい景観に気持ちが昂る。
滑滝、チムニー、チェックストーンなどまさに滝のオンパレードだ、直登、ヘツリ、突っ張り、ザック吊り上げ、トップ交代しながら標高を上げる。
沢沿いにミソガワソウとダイモンジソウが咲き、後方に中ノ岳を見ながらテンポ良く登りたいが何せ疲れとザックの重さで足が重い。
c1200過ぎまで次から次と出てくる滝に嬉しい悲鳴が上がった。
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c1350で優に50mはありそうな大滝に出合う。
見上げる高さに圧倒され右岸から高巻くことにする。
赤い穂先のエゾトウウチソウが咲く急なガレを登り、更に落石に怯えながらルンゼを詰める。
上のハイマツに出るまでザイルを3度延ばして時間を食う。
沢身に戻ると既に源頭の雰囲気でほっとするが予報通り雨がぱらつき風が出始めた・・少し急がねばならない。
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岩が積み重なる源頭を詰め、水を汲むとすぐc1500で涸れ沢になる。
リンドウ、キタアザミ、ママハハコなどが咲く花畑に明瞭な沢筋が延び、更に鹿道から藪漕ぎなしで稜線に飛び出す。
山頂までは東尾根の登山道を辿るが小雨混じりの強風が吹き付け寒いのなんの、僅かな距離がやたら長く感じられた。
ヘッデン付けながら西尾根を1時間ほど下ったc1210コルにテントを設営、暖かな夕食を摂ってようやく落ち着く。
22時半就寝、4時前起床、今朝も天気まずまずで目の前に中ノ岳がすっきり見える。
パスタを食し小屋まで残り8キロの長い下りが始まる。
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いきなり1301mポコの登り、次のポコからはペテガリ岳山頂と西尾根、ルベツネ山と左にヤオロ、1839峰、シビチャリ山が見える。
繰り返す登り返しにうんざり、休むたびに足が固まって辛い。
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ペテガリ沢の対岸に中ノ岳、ベッピリガイ山、日が当たるピリガイ山を眺め一休み。
登山道は刈り払った笹の枯れ葉で滑り易く、コルにオオヤマサギソウ(写真)が咲いていた。
すれ違ったのは埼玉の単独者のみで山荘前にこの人の自転車があって驚く。
ベッピリガイ沢の手前から再びポツポツ降られクタクタの濡れ鼠で下山、三石温泉でさっぱりして帰途につく。
少しなめていたA沢だが結構タフな沢で山谷の!!という評価は辛目では、
ともあれ噂通りの綺麗な函、登り応えある滝、そして痺れる高巻きに満足する。
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