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振内から岩知志に入るとシキシャナイ岳の鋭鋒に並んで大きく聳える山が見えてくる。
かつてヲパケシウシベ岳と呼ばれた山は「甘藷岳山荘」の中で(弓部山 ユ・ペッ 温泉・の川)と紹介されている。
松浦武四郎のスケッチにシキシャナイ岳と共に描かれていることを知り、以来この界隈に来るたび気になっていた。
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低気圧の影響で山選びに苦慮する中、割りとましな胆振方面でこの山を予定した。
ルートは豊糠から入って南西尾根を辿るのが良さそうだ。
netで学生の記録が一件出てきただけだが動機が一緒で可笑しい。
日高道を飛ばすと工場の煙突から出る煙が横になびき、風に叩かれそうだ。
そして幌尻岳の案内板を折れて少しすると武四郎のスケッチと同じ風景に思わず嬉しくなる。
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パンケイワナイ川の林道に入ってすぐ取水施設に車をデポ、
さらに深い車の轍が延びてたぶん鹿撃ちのようだ。
林道は早々と消失し、荒れた沢中を進む。
危ういブリッジばかりでもう一週間遅かったら辿れなかっただろう。
気疲れする沢詰めに1時間半掛かり、330で取り付きほっとする。
凹凸の目立つ植林に登高を重ね650のコルで尾根上に出るとガリガリ斜面に雪が浅く載って登り難い。
特に700前後の急な痩せ尾根は引っ掛けシールに辛く、先が思いやられた。
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幸い750からは滑りの楽しめそうな尾根が900まで続いてほっとする。
天気が良ければ幌尻岳やリビラ山など日高の山々が見えていたかと思うと残念だった。
950から再び細尾根となり、南斜面が落ち込んで気は抜けないが雪が多くなって登り易い。
西から尾根が合流すると雪庇の頂稜で時折、音も無く崩れ落ちてはっとする。
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登り切った高みはピンクテープすらない質素な頂で残念ながらガスっている。
風が止んだ山頂でシールを外し細尾根を慎重に下とする。
唯一気持ちの良い尾根を滑り終えた所にkuさんが目印を付けてくれていた。
そこから700の痩せ尾根を大きくトラバースして650のコルに戻ったがなかなか良いルート取りだったと思う。
スキーの下山は流石に早く、植林帯を横滑りで降りて沢の出合いとなる。
かつて松浦武四郎がスケッチした山、名前すら忘れられた存在だが登り応えある良い山だった。
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