ヌビナイ川右股川〜ソエマツ岳〜ピリカヌプリ 1625m・1631m(南日高)  ■Home
2006年8月上旬 総時間24:45(休憩含)
8/3(木) 23:00大樹町道の駅C0
8/4(金) 7:25右岸林道終点→7:42入渓→9:42下二股→14:20上二股C1
8/5(土) 4:50上二股C1→(8:00-8:28)ソエマツ岳→(13:40-14:08)ピリカヌプリ→16:45上二股C1
8/6(日) 6:00上二股→11:55右岸林道終点

日高の沢の中で最も美しい渓相と言われるヌビナイ川を一度は訪ねてみたいと思っていたが 「かつての山岳会の事故」 以来そう易々と入渓する気になれなかった。 しかし6年ぶり3度目の計画で何としても決着を付けたいそんな思い入れがあった。

下二股(左股川)はのっけから威圧される       ご冥福をお祈りし、遡行の安全を誓う        8b釜付きの滝、左岸の側壁から登る

8/3(木) メンバー4名で札幌を出発、高速を使って天馬街道を飛ばし予定より一時間早く大樹町道の駅で北見Ku城さんと合流する。 ここは綺麗なトイレもあり静かで良い場所だった。早々予備のテントを設営し近くのコンビニで仕入れた冷たいビールで安着祝いを始める。

8/4(金) 晴れ後曇り/身支度を済ませ6時出発、カムイコタンキャンプ場に一台デポする。 幸徳に入りヌビナイ橋を渡ってすぐのT字を左折し林道右岸線を18km走って終端広場に車を停める。 林道を数百b戻った熊の沢出合い下流より入渓する。 初めて見るヌビナイ川は広い川原で水量は少なく透き通る水に先の期待が高まってくる。 単調な川原だったが507m標高点を過ぎると沢幅が急に狭くなり滝や釜が次々と現れ近づく核心部を予感させた。 釜は時に激しく渦を巻き、時に深くエメラルドグリーンの水を湛えている。

 [その1]函状の谷間に大きな雪渓が残りその先に狭いゴルジュと滝があった。 雪渓を上って右岸から高巻き沢身に戻った所は彼の3名が流された滝口からほんの数b先だった。 当時たまたま山中に居た人から聞いた話では「一旦雨が降ると忽ち増水し水中を流れる岩が擦れ光った」らしい。 今は想像もできない穏やかな流れである。(改め故人のご冥福をお祈りする)

 [その2]8bの釜付きの滝が現れ左岸の側壁から登って滝上に出る。 右岸の高所よりボロそうなロープが垂れている。どうやら凄い高巻きルートがあるようだが険しそうで通る気がしない。 帰りも左岸からザイルを出し懸垂する。

 [その3]二つ目の大きな雪渓に上がると遂に大滝を超える左岸のトラバースが現れた。 下のゴルジュまで20mはあり落ちたら死ぬか良くて重症の何れかだろう。 しかも足場になる草付きは想像以上に痩せ枯れ枝やゴミが溜まって厭な感じがする。 内心「撤退!」の声を望んだメンバーもいたようだが皆似たような気持ちだったに違いない。 たが此処まで来て引き帰す理由が見付からない(笑)。 今まで何千人も通過した筈なのに皆無事と言うのが不思議なほど怖い場所だが何としても行かねばならない。 このままじっとしても始まらずトラバースの中間点までKu城さんを先頭に行く。 ちょうど中間の1m程上に唯一適当な潅木が一つありビレーをとって終了点まで行ってもらう。 中間から終了点の間が特に厭らしい箇所だがここにメインザイルを渡し帰りまで残すことにした。(帰り回収)  一番の難所を抜け一同に笑みが戻ったのは言うまでもない。 ゴルジュにトラロープが垂れ落ちていたが雪の重さに潅木が耐えられる筈がない。  この核心部から気の抜けぬ左岸のトラバースが続いた。

 [その4]c655の先に直登不可能な滝があり右岸を大高巻く、中間の高所から水が流れ足場は軟弱で悪い。 しかし途中で不意に目に飛び込んできた七つ釜は本当に感動的だった。 降りると花崗岩の岩盤で白い床!とても美しい!恐怖の高巻きを越えた者だけが目に出来る自然の芸術である。 二年前の大水で釜に石が堆積して駄目になったと聞き心配したが復活しつつありホッとした。

 上二股はガレに囲まれ焚き木の跡と小さなテン床がピリカ側にあった。 すぐ傍を冷たい清水が流れビールを冷やし流木集めに奔走するが意外に数がない。 乾いた木は一発で火が着き濡れた服を乾かしながら乾杯する。 夢にまで見た七つ釜を拝め高揚してるせいか何時もの発泡酒がことのほか旨く感じた。 夕食はKo幡さんにいつもお任せだ、米を炊き春雨とサラダが旨かった。 Ka田さんは疲れたのか珍しく早々と寝てしまう。 ぱちぱちと弾ける焚き火を囲み何とも言えぬまったりした時間が流れていく。 一時激しく雨が降ったが焚き火は自然と復活し空には満天の星が煌きだす。

     
厭な場所だぁ〜、核心部のトラバース         この左岸を大高巻きすると七つ釜だった。遂に来た!感無量!一つ・二つ・三つ・・数え切れない? 

8/5(土) 快晴だった。朝日が谷間に射し込み周辺の緑がオレンジ色に染まっている。 今日はソエマツ岳に登ってピリカヌプリへ稜線を繋ぐ予定だが藪の状況次第で時間切れもありうる。 念願のピリカへ到達するかどうか大事な日にも拘わらず二日酔いで頭と体が鈍い。 南東面直登沢は聞いていた通り快適な沢だった。少し行くと緩やかな30mの大滝が現れ乾いた岩盤を直登する。 次から次と登れる滝のオンパレードに嬉しい悲鳴を上げぐんぐん高度を稼ぐ。 960mで左を選び1280mで山頂直登を目指して右を選ぶとすぐ水が枯れた。 後ろのピリカの高さを意識しつつお花の点在する急な草地を詰め縦走路の踏み跡に出る。 5分で三角点だけの質素な山頂に立つと見覚えのある中日高の山々が累々と重なっていた。 近くの神威岳とペテガリ岳が堂々として立派である! 1839からカムエクまでの山々もはっきり見えている。 ようやく僕の二日酔いも収まりハットする!?シュリンゲとお助け紐を何処かに置き忘れてしまったのだ。 最近どうも忘れ物が多くて困る!? 従走路はラクダの瘤のようなP1534を過ぎると不明瞭になるがハイ松や潅木は可愛い方だった。 途中の岩峰は上がったり基部を巻いたりだが日高側がスッパリ落ちてあまり良い感じがしない。 鹿と人間の共同作業で出来た踏み跡はかろうじてピリカヌプリまで延びている。 ところがこの鹿道が曲者でP1529から右の尾根に下る跡に危うく騙されるところだった。 一瞬視界が晴れKa田さんが気づいたから良かったものの一本道だとばかり思ってた稜線は二手に分かれていた。 ピリカ手前のコルで日高側の沢から3名が山頂はどっちだと叫んでいる? 後で聞くと鹿道に騙され余計な時間を食ったとかでヘロヘロになって登ってきた。(今山行で会った唯一のパーティー) ついに念願のピリカヌプリ山頂に立った! 生憎視界は無かったが充実感で一杯である。 名の響き通りになだらかな頂には三角点のみ置かれテン場になる平地が一つ二つあった。 北面直登沢は1200mの三又までガレガレの涸れ沢で容易に下れたが終盤になって大きな滝や釜が固まって現れる。 上二股に戻ると空は再び青空に戻っていた。 早々と夕食の支度をする。 最後の晩餐は鰻丼と豪勢だ!残りの流木とアルコールを燃やし最後の夜を楽しんだ。

     
ソエマツの登り、グングン高度を上げる     最後の詰め、稜線の向こうにピリカヌプリが見える          ピリカの降り、テン場近くの滝

8/6(日) 朝日が七つ釜に射し込み見事なまでの自然の美しさに見送られる。 問題のトラバースはザイルがあるだけで随分と気が楽になるものだ。 メンバーと天気に恵まれ素晴らしいヌピナイ川を楽しむことができた。

 [おまけ1]林道終端から車を走らせてすぐ道脇の笹がガサガサと動いている。 鹿が飛び出す可能性がありゆっくり走ると1mの至近にでかい熊の顔があった。 後ろを見ると熊は道路に出ている。車内は騒然そして爆笑の渦になる。(そういえば上二股まで熊の落し物が多かった)

 [おまけ2]カムイコタンキャンプ場に停めたKu車は三日間も持ち主が現れないものだから管理人のおじさんに 不審車として通報されていた。 警察から東京宅へ指名手配の電話が何回もあったそうでさぞ心配かけたことだろう。


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