北鎌尾根〜槍ヶ岳〜大キレット〜北穂高岳 (北アルプス) 地図はこちら ■Home |
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8/1 中房温泉から燕山荘までの合戦尾根は北アルプス3大急登の一つ、
大汗掻いて小屋に着くたび一缶500円のビールを朝からぐびっとやるのを楽しみに登る。
合戦小屋では名物のスイカを売り子さんが愛想よく登山者に声を掛け、
1カット1000円と言うので半玉のことかと思ったらただの1切れで驚いた。
普段、山で物を買う習慣などなく物珍しい光景を眺めながら一缶目を開けた。
合戦小屋からは登りも緩くなり稜線が見え始め燕山荘へ到着する。
山荘から目と鼻の先にある燕岳は花崗岩の独特な風景が人気の山で人の往来が絶えない。
空身なら数十分で往復できそうだが二缶目を開け腰が据わってしまった。
すっかり気持ち良くなり燕山荘を出発して大天井岳に向かう。
晴れていれば槍ヶ岳・穂高連峰がよく見える筈だが生憎の曇り空、
その代わり足元に咲くコマクサの群落が心を和ませてくれた。
行き交う登山者も少なく開放的で静かな尾根道が続き、
振り返れば今歩いてきた遥か彼方に燕岳がくっきり姿を現しやっぱり登れば良かったと悔やむがもう遅い。
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切通岩鞍部の岩壁にはめこまれた小林喜作のレリーフ、酒の好きそうな喜作爺さんに笑われてるようで、
大天井岳にはちゃんと登ろうとザックをデポし急いで登ったら何故か大天荘に出てしまった。
適当にガレの高みを目指すと北アルプスには珍しく質素な山頂だった。
ここから喜作新道越しに連なる東鎌尾根と槍ヶ岳を眺望するも空しく雨が降り出し急いで戻ることにする。
肌寒くカッパを着て調度良いくらいだったがそろそろ喉も渇き大天井ヒュッテで三缶目を開けた。
ヒュッテを出発し再び喜作新道を歩いてすぐの貧乏沢コルを探すが下ばかり見て歩いたせいか頭上の色あせたテープを見逃してしまう。
戻ってよく見ると「貧乏沢入口」の標識がひっそりと道脇に置かれ此れより貧乏沢の下降を開始しました。
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天上沢の出合いを目掛け標高差800mを下降する。
始めは藪を分け次第に急なガレになると落石が怖く間隔を空ける。
なめてかかったが一端の沢で右から支流が滝になって合流すると徒渉するのに靴がスリップして難儀する。
「貧乏沢なんて変な沢で死にたくない」と嘆くのは後ろで派手に転倒するkaさんだがかなり疲れてる様子である。
下流には左岸に巻き道があり、やがて広い河原の天上沢に合流した。
幸い大雨の影響もなく坦々と渡渉を繰り返しケルンの積まれた北鎌沢に出合う。
テントが一つぽつんと張られており、我々は本流の対岸に良いテン床を見つけた。
焚き火で服を乾かしたいが湿気った木ばかりで火が起きず諦める、中華丼を食べ20時就寝しました。(行動時間12:10)
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8/2 朝には雨が止み、まだ暗い4時頃、単独者がヘッ電を燈し北鎌沢を登って行った。
我々は明るくなった5時過ぎ出発しました。
北鎌沢右股出合いで行動水4Lを汲むとザックが20kg近くに重さを増し、2490mのコルを目指し急な沢を詰めた。
水は何度も伏流を繰り返したが結局コルの直下100mまで水が流れわざわざ下から背負う必要などなかった。
コルには1.5張分のテントスペースがあり、グッタリしながら休んでると先行してる筈のテントの単独青年が登ってきて驚いた。
何でも2本手前の二股を左に入ってしまい我々の声に気づき危ういトラバースをしてきたらしい。
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さてハーネスを付けいよいよ北鎌尾根に突入する。
この青年は丸腰で何も装備を持ってるふうでなく、
何となく我々と一緒に行動したがってる様子だったがここから先はルートファインディングが楽しみなので足の速そうな彼に先行を促した。
案の定、レリーフの掛かる岩場を駆け上がるや1-2つ先のポコであっ言う間に姿を消した。
北鎌尾根の出だしは岩稜とハイマツ・潅木の中に踏み跡が続き突然、猿に驚かされる他は日高の道なき陵線と似ている。
P8に登って振り返ると北鎌沢のコルとP7以前の岩塔群が雲の下に垣間見え高度感抜群だった。
P9天狗腰掛を越えると基部に小さなテン場が一つあり更に続く小ピークへと向かう。
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そしていよいよ雲の中に独標が近づいてくる。
ハイマツや潅木が減って岩陵一色になると一気に高度感が増した。
ルートを示す印など当然ながら一切なく踏み跡を迂闊に進めばその先で行き詰る可能性もある。
登るか巻くか自己判断、自己責任が求められ、またそれを楽しみに皆やって来るのである。
独標はガスで見通しが悪く基部をトラバースすることにした。
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狭いザレのトラバースやバンドは見た目ほど悪くない、
へつりも割としっかりした手掛りがあるが足下は谷底で掴んだ岩がぽろりと崩れればそれで全てがお終いである。
独標のへつりが一段落した所にチムニーがありそこを青年が登れず我々を待っていた。
先に登って見せたがやはりだめで上からザイルを垂らした。
岩の経験を尋ねると全くないという返事に驚く。
青年が再び先行した後でメンバーの一人が「彼は破れかぶれだ死に場所を求めてきたのではないか?」と言ったが私も同感だった。
今まで岩の経験一つなく北鎌尾根に来た者がいただろうか?
もう一人のメンバーは「それでも人間追い込まれれば何とかなるものだ」と言ってのけたが確かにもう引返せる場所ではなかった。
独標はピークを踏まずそのままトラバースで核心を抜ける。
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少し先でルートを見失ってる青年に再び追い付き以降は我々が先行する。
時々小雨がぱらついてじっとしてると寒く、水の消費が少なくて済んだ。
ホワイトアウトに浮かぶ岩塔はまるで墨絵のように重なって幻想的である。
岩塔は思い切って直登するとその後のルートが見つけ易く、巻く場合は概ね千丈沢側に踏み跡が付いていた。
それでもP11からP12のコルへ下るルートが分からず暫く行きつ戻りつしたり、
P13のピークで大岩を抱きかかえるようにトラバースする所でもルーファイディングに時間を要した。
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P15を巻く途中で一本支尾根が入りルートを外す厭な予感がしたが旨い具合にピーク近くの陵上に戻れた。
全体的にペースが上がらずこの分だと槍の穂先を超えるのは18時を廻りそうである。
北鎌平が近づくと漸く槍の頂陵部が大きなシルエットとなって現れ子槍と孫槍まで見え嬉しかった。
しかも今までで最上のテン床が北鎌平にあり、水も大量に残ってるので予定を早めC2とした。
青年が遅れて到着しすぐ隣にテントを張る。話をすると意外に素直な方で「去年ジャンダルムを単独でやった乗りで
来たがレベルを超えた難しさに反省している」と言うのが印象的だった。
テントに落ち着くや強い雨が降り出し、カレーを食べ19時就寝しました。(行動時間11:10)
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8/3 常念岳が暗闇に輪郭を現しその中に時々フラッシュと思える小さな明かりが点滅している。
空が徐々に白み始めたが御来光は期待できそうになく足元が明るくなるのを見計らって出発した。
北鎌平からはごろごろした巨岩を縫うように千丈沢側に取り付き、
踏み跡を辿って一旦天上沢側に移るとケルンが積まれ石を足した。
そこから再び右寄りに登っていくと足元にハーケンと古いシュリンゲの垂れた「下のチムニー」へと導かれた。
ここはわざわざチムニーを登らずとも右から楽に巻いて越える。
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続いて「上のチムニー」が現れここにもハーケンが打たれていた。
岩登りのグレードは3級くらいで手掛かりは十分ありザイルは必要なさそうだが、せっかく重いザイルを担いで来たのだから一回くらい出すかということでLが引いた。
ザックが引っかかってチムニーの奥に入れず手掛かりある右の側壁から順に上がる。
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そこから白い標柱に導かれるように左に回り込むと山頂には所狭しと登山者が並んでビックリしました。
すぐさま上から歓声が上がり写真を撮られながら岩を攀じ登って祠に出ると
頂上にいた多くの人達から拍手で迎えられ感激しました。
ここまで終始天気と展望に恵まれなかったが北鎌尾根から槍のピークを踏め感無量!
言葉で表現出来ないこの感動は生涯忘れる事はないと思う。
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