カムエクの北東に通称「プリマモンテ」と呼ばれる1903ピークがある。
ピークからは九ノ沢カールの眺めが良く、いつか九ノ沢から眼下のカールを訪れてみたいと思っていた。
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札幌から3時間半で札内ヒュッテに到着、駐車場に30台ほど止まってビックリするが半分は釣りの様だ。
七ノ沢出合まで6kmの林道は自転車を使う、歩いて2時間掛かるところを40分とかなり楽だった。
出合には数台の自転車が駐輪していたが、良い道なんだから早く昔の様に車を通して欲しいものだ。
八の沢出合いは我々を含めてテントが4張りとあずましく、隣の単独者が心配そうに色々尋ねてくる。
そして一緒に焚火しながらビールをグビーっとやってるとトコトコ下って来たのはshiraちゃんだった。
今朝3時半に出て日帰り登山とのこと、ゆっくり話す間もなく下って行った。
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翌朝まずまずの天気、八ノ沢を進む単独者と別れて九ノ沢に向かう。
左岸の明瞭な巻道を辿ると出てきたのは雨量観測小屋だった。
暫くして九ノ沢と出合う、水量は本流とどっこいどっこいで水が多い。
そして両岸高く迫る先に滝が見えてきた。
この沢で唯一の核心場と言われるゴルジュの連滝だが数年前に大きな事故が立て続けに起きた場所である。
1つ目(写真中)は水瀑で直登できそうもなく巨大なCSの隙間を狙うがぬめって駄目だった。
ロープを出して左岸を巻くとすぐ二つ目が視野に入る。
答えは既に分かっていたがその先に見える3つ目の滝を含めてまともに登れそうな代物ではなかった。
下手に中に入ると苦労しそうなのでそのまま高巻くことにする。
岩でどんどん高く追いやられ、そろそろ良いだろうと適当に下りたらちょうど4つ目(写真右)の落ち口近くだった。
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ゴルジュを過ぎると明るい渓相になるが相変わらず大岩がゴロゴロしている。
岩陰にダイモンジソウが咲き、沢沿いの草地にミソガワソウがてんこ盛りで見事だった。
1290mの二股で水量が半分になると再び両岸迫るV字の中に今度は快適な小滝が連続する。
もう何も無い沢だと聞いていただけに手頃な滝の出現が嬉しくまたどれも滑らず快適である。
1420mで左から入る顕著な沢筋を過ぎると空が広がり、源頭近しを思わせる。
いや〜長くて思った以上に時間の掛かる沢だった。
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そしていよいよカールだが残念ながらガスってしまった。
熊が気になり雄叫びを上げながら登って行くと水の中に白い板切れが目に留まり?ふと横に放置されたグライダーの残骸に驚く。
半分シートが掛けられていたが簡単に焼却出来ないのだろうか、剥き出しのコックピットが憐れだった。
色づくナナカマドの実に秋を感じながら細々とした水流を辿るとカールの入口で伏流し、冷たくて美味しい水を汲む。
こじんまりした静かなカールだ、綿毛のチングルマが一帯を覆い、タカネツメクサとヒメクワガタ、エゾツツジの咲く草地を進む。
急なガレ場ではナキウサギの声がそこかしこから聞こえ、上は熊の堀返しだらけだが藪漕ぎ無しで稜線に出ることができた。
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そこからカムエクまで遠いこと、縦走路のハイマツってこんなに酷かったかな。
疲れて立ち止まるとブヨと小蠅が煩く、きっと汗臭いんだろうな早く風呂に入りたい。
途中でテントを張れそうな場所を期待しながら枝を掻き分けると漸くカムエクの山頂が見えてきた。
そしてコルから最後250mの登りで山頂に到着、夕日が出て暗くなる寸前だった。
まともなテン場は直下に一つあるのみだが誰も居なくて幸い、徐々にガスが晴れて明日のご来光が楽しみである。
夜中は月明かりと満天の星でありえないくらい明るかったがシェラフカバーのみだったので寒い思いをした。
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八の沢カールから登ってきた登山者の鈴の音で目を覚ます。やばい寝過ごした。
急いでテントの外に出ると雲海の上にご来光が上がったばかりで、山頂からは目の覚める様な光景が広がっていた。
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風が無くてとても穏やかだ、徳島からの登山者と赤く染まる山々を堪能する。
南方にはピラミッド峰と1826峰の先にコイカクの稜線と1839峰が聳えている。
更にペテガリ岳とピリカヌプリ、楽古岳まで同定できて今日の天気に感謝、カムエクは雪の時期を入れて4度目だが割と相性が良い。
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北方には辿った稜線が見え、プリマモンテに朝陽が当たって格好良い。
札内岳、エサオマントツタベツ岳、幌尻岳、戸蔦別岳、1967峰などお馴染の山々が望まれ、
そしてナメワッカ岳とイドンナップ岳の山塊が雲海に浮かんで何とも言えない景色である。
あとから登って来た三百名山狙いの方がこれでリーチが掛かったとか、その中でカムエクが最難関の山だと言っていた。
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まったり眺望を楽しんだ後、腹ごしらえして下山とする。
八ノ沢カールを左に、コイボクカールを右に見ながら気持ちの良い稜線を下る。
八ノ沢カールの登山路は熊がハクサンボウフウを掘り起こした跡で一杯だ、そして固有種でちょっとケバイ感じのヒダカアザミが凄い数だった。
三股の下部にはまだ大きな雪渓が残り、デブリでかなり荒れていたが全般的に以前より巻道がしっかり付いている。
そしてすれ違う登山者のほぼ全てが本州からで驚きました。
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