カムイエクウチカウシ山 1979m(中部日高)地図はこちら(約140kb)  ■Home
2002年9月下旬 晴 八ノ沢コ−ス
1日目 総時間3.00  標高差246m  総距離5.9km
2日目 総時間10.20 標高差1128m 総距離13.3km(3.7km+9.6km) 休憩時間含む
1日目 七ノ沢出会→(1.40)八ノ沢出会→(1.20)830mC1 
2日目 C1→(0.50)三股→(1.45)八ノ沢カール→(0.45)稜線→(1.00)山頂
    山頂→(0.45)八ノ沢カール→(1.15)三股→(0.40)テン場→(1.05)八ノ沢出会→(1.50)七ノ沢出会
道路工事だった七ノ沢出会の様子         広い河原を持つ札内川             八ノ沢出会テン場、下山時にテントが二つ
「カムエク」への登行を前に気も高鳴るが例年のように事故の起こる山でもあり単独行なので少し不安だった。  先月十勝幌尻の山頂で会った単独者が下山中に間違って滝を下ってしまい酷い目にあったことや、 '01年に本州の夫婦(女性)が同じく下山中に路を誤って滑落死した事故が記憶に新しい。  「間違える場所は何処だろう?」 事前に調べたくても登山道のある一般的な山ではないのでガイドブックに載ってない。  しかし日高一・二を争う岳人憧れの山だおそらく例年数百人は登っているだろう。まあ行けば何とかなるだろう! 心は既にカムエクにあった。   まず日帰りにするか泊まりにするかだが日の短い時季なので一泊にし、  次にテン場を「八ノ沢出会」か「カール」にするかだが三股からの急登を考え「八ノ沢出会」もし時間に余裕があったら「三股」までとした。
札幌を早朝出発し中札内のピョウタンの滝まですこぶる順調、 噂に聞いてたがこの先延びる日高横断道は幾つものトンネルをぶち抜いた「黄金道路」で登山口の数キロ手前まで舗装が延びていたのには驚いた。 工事ゲートの誘導員は随分山に詳しく今山に入ってるのはNHK取材班の数人だけであること、三股から先のY字は絶対に右に行かぬこと、 数日前に夕刻4時頃下山した人が八ノ沢を見過ごし自分のテントを取りに戻った笑い話しなどを教えてもらう。
三股から先のY字(登り)とその先にあるS字(下り)は要注意であることは抑えていたがどんな場所なのだろうか? 
11時半に工事ゲートを越え大きな砂防ダム沿いを行くと立て看板 「七ノ沢へは行けないので右に入るよう」とありダムの終端の広い河原を通って札内川へ入った。<注1>
札内川は中州のある広い川で渡渉の深さは膝かぶ上くらいだった。 行く先のテープを見逃さぬよう中州から左岸沿いの巻路を延々と歩く。 巻路は笹分けだったり時に枯れ沢だったりしたが巻路を外れ河原を歩いたりと結構アバウトな歩き方をした。 再び左岸の巻路を歩き対岸へ渡って間もなく左手から八ノ沢が流れ込んでいた。 左岸を歩いたまま出会いを見逃して本流(九ノ沢方向)まで行ったと言う話もあるので注意がいる。 テン場は八ノ沢出会から2-300m先の右岸平坦地で誰も居ない、 何だか薄暗い感じがし予定より時間も早いので三股付近にあるテンバまで行ってみようと思った。
八ノ沢は右岸か左岸どちらかの巻道を坦々と歩くのが基本であった。 1時間ほどして右岸の巻道に入ると小さなテントと焚き火跡に人の気配を感じホットした。  後で判ったのだがここは900mテン場ではなく830m付近の右岸の高い崖から水が流れ落ちている場所でTV取材の物資置場に使っていようだ。 ここを三股手前のテン場と思い込みこの調子でカールまで行ってしまおうと考えた。 ・・・30分ほど歩くと左方から落差数十mの一直線に落ちる滝、右からも沢が入り三股に着いたと思った。 巻路を外し沢中を遡行していると滑ってバランスを崩し1mの深さの水にお尻から転んだ。 幸い臀部を少し打っただけで済んだが全身水浸しでカールまで行く気力が萎えてしまった。 先のテン床に戻ってテントを設営し焚き火で濡れた衣類を乾かした。 ザックの中は袋等に包んでいたので大丈夫だったが問題はポシェットのデジカメでレンズの中に水気が入り完全にイカレテしまった。
早々と食事を済ませ寝袋に包まり酒を飲んで寝る体制に入った。 18時を過ぎ深い谷間は真っ暗になっていた。もしあのまま登っていら今の時刻カールに着いていただろうか?  転んで引き返したのが幸いだったかも知れない。(夜中はさすがに寒く何度か目が覚めた)
翌朝も寝袋から出たくないほど寒く外の冷たい靴下とシューズを履きたくない・・ しかし見上げる空は強烈な青空を予感させぐずぐずしていられない。 荷の大半をテントに残し早々に出発した。 昨日三股と思ってた場所から300m程進むと一段スケールの大きな本来の三股が現れ軽身で50分も経っていた。 結果的に昨日は引き返して正解だったか?もっと地図読みを慎重にしなければ・また一つ反省だ。
さていよいよ核心部に入るのだ気を引き締めて行くぞ!巻路の出口や怪しい箇所は帰りに見過ごさぬよう目印テープを下げることにした。
三股の真ん中を進むと左岸に明瞭な跡後があり連続する滝の巻路も大方左岸にある。 滝の直登は無く高い所の岩壁にはロープが張られてるが眼下の滝に足を滑らせれは只では済まない。
本流の脇にある水の流れる小沢を詰めると途中に迷いの名所「Y字」があった。 あまりの急登で下ばかり見ていると間違えて水のある右に行ってしまうのだな! 進むべき左の枯沢にはテープが下がっていた。 山頂に後から来た単独者もここで間違えたと言っていた。次第に四つん這い状態になり途中でおかしいと思ったらしい。
もう一つの要注意は更に100m程行った処にあった。 下から行くと横S字状に少し下ってすぐ隣の涸れ沢に移るのだがなるほど下山時に見落としそうだ。<注2>
更に少し登って涸れ沢から本流に抜ける出口も下山時に見過ごさぬ注意がいる。 この二つを誤って直進すれば滝口であり先に会った勝幌の男性も本州の女性事故もここで迷い滝へ下ったのだろう。
やがて水流が細くなり最終水場の湧き水を過ぎると急に空が開け待望の八ノ沢カール(1500m)にポンと飛び出した。 熊避けの笛を吹き鳴らし踏跡を辿って慰霊碑まで来ると取材班のテントが3張りも設営され少し拍子抜けした。  途中の岩場で鳴兎が棲み家から出てくるのを狙ってカメラがセットされていた。 全く騒々しくやって来て仕事の邪魔をし申し訳ない。 傍で日向ぼっこしているスタッフは暇そうで聞くと一週間前から入ってるが熊は見なかったと言う。 稜線へ上がる九十九折の急坂は熊の掘返しが数箇所あり柔らかい糞もあったが下に人がいると思うと怖くは無い。 ピラミッド峰は何処から見ても凛とした容姿をして格好よく時間があれば寄りたかった・・
痩せた稜線に這い松が被って所々足元からスッパリ切れ落ちた崖が覗き見える。 凄い高度感だがはたして日高を繋ぐ稜線は延々とこんな感じだろうか?
そして遂に日高の名峰カムエク山頂に至った。 空は黒味ががって宇宙を想像する青さであり南北に連なる峰々を前に日高のど真ん中に立てた喜びに感無量である。
歓喜の声を上げ日高を独り占めした気分に浸ってると突然単独男性が続けて2名登ってきてビックリしたが共に日帰りだと聞き 更に驚いた。カムエクも日帰りの山となってきてるのだろうか? しかも日高の経験が一人は剣山のみ別の一人は芽室岳のみと聞き少し安易過ぎないだろうか。
残念なことにレンズの曇りが抜けず折角の山頂写真はダメだった。  山頂で過ごす時間を予め30分と決めていたので後ろ髪惹かれ下山する。 三股までの急斜は思ったほど難儀しなかったし要所に目印を付けて来たので不安なく下れた。(もちろん自分のは回収する) むしろテントを撤収した後の八ノ沢出会いまで巻路が分かり難く行き帰りでこうも違うものかと思った。 登山口に着いたのが4時15分、険しさ・体力・展望全てに中身の濃い思い出深い山行となった。
<注1>現在横断道路建設が中断し札内ヒュッテ過ぎのトンネル出口から七ノ沢出会いまで7kmの歩行を強いられる。
<注2>今は枯れ沢に立入らぬようロープが張られている。
カムエク〜1823〜コイカク縦走はこちら
エサオマン〜カムエク 縦走はこちら
濡れた衣類を焚き火で乾かす830m付近      八ノ沢830m付近                三股(真中の沢)左岸を巻く
カールへ出て登ってきた八ノ沢を眺める      稜線に出た処からピラミッド峰を仰ぐ      稜線からカールへ下る(中央がテン場)

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