上ホロ北西稜 (十勝連峰)冬登攀 1920.0m
■Home |
2008年1月中旬 メンバー3名
凌雲閣P7:00→安政火口7:50→北東尾根末端8:45→1岩塔9:20→2岩塔10:05→3岩塔10:40→上ホロ12:30→安政火口14:30→凌雲閣P15:20(休憩含)
冬の上ホロは化物岩とD尾根しか登ったことがなく、
三段山の中腹から上ホロを写したパネルを睨めては迫力ある白い崖に武者震いする。
知人は尾根歩きみたいなもんだと言うので少し安心してたがどっこい厳冬期登攀のシビアさを味わされる山行だった。
奥の上ホロを目指す、右は八ツ手岩と化け物岩 第一岩塔、セカンドで精神的な安心感があった 第二岩塔、足元の視界が良いのも困りものだ
1/18 (金) 予定通り20時過ぎSさんの車に乗せてもらいIさん宅へ向った。
運転手に甘え後部座席で日本酒をちびちびやって一人ご機嫌になる。
無人の駅舎が今晩の宿だったが不覚にも寝入ってしまい気付いたら見覚えのあるスーパーの駐車場でテントの設営が終わったところだった。
全くかたじけない・・・早々に荷を移し二次会いや一次会を始めるが切りがないので25時に就寝した。
1/19 (土) 朝5時に目を覚ますとめちゃくちゃ寒く気温は-26度だった。
急いでテントをたたみ凌雲閣に向かうと気温がどんどん下がって-30度を切ってしまう。
東の空が薄っすら赤みを帯び天気が持つのは午前中だけだから頑張って登らねば!
だが昨夜の日本酒が祟ったのかさっきから腹の調子が悪い・・・こんな寒気じゃ尻を出すのも億劫だが自業自得である。
少しすっきりしてモチベーションやや回復・・・
朝焼けの景色がとても綺麗でデジカメで2-3枚撮るとたちまち寒さにやられ使い物にならなくなった。
安政火口の手前でスキーをデポし北西尾根の末端でハーネスとアイゼンを装着する。
沢の源頭でSさんが腹這ってるので何ごとかと思ったら落とし穴だ!
雪が覆って分からず油断できない。
狭い足場でビレーの準備をする、痺れる寒さだ 第三岩塔は結構立っていた、Sさんリードを始める やっと上ホロ山頂に着いた、Iさん撮影
いよいよ荒涼とした山肌が間近に迫り緊張と興奮が高まってきた。
硬い雪面にアイゼンを効かせて登ってくといつの間にか結構な高さとなり後ろの三段山が山らしい姿を見せ始める。
稜は次第に細く急になってやけに尖がった第一岩塔が迫ってきた。
スタカットで雪の張り付いたリッジを右から乗越す。
第二岩塔はIさんが先頭になり急な稜上を登っていく。
特に怖いという印象はなかったが左から岩塔をかすめるように巻く辺りが厭な感じだった。
ここは岩塔そのものを左から巻けば易しいとのことだが敢えて難しいコースを選んで頂きありがたい・・・
いまさら戻る余地も無く腹を決めて第三岩塔に向った。
ザイルを出すが
雪面には支点になるものが無くスタンディングアックスビレーでザイルを延ばした。
10m程登ると狭い岩場に残置ハーケンが一本あり隣に打ち足してビレー点を確保する。
風がまともに当たる場所だった。
Sさんが登り始めるとすぐ姿は見えなくなったがザイルが引かれるたび上から砕けた氷が降り掛かってくる。
途中で一旦ザイルが止まり再び動き出すまで足踏みしながらビレーした。
次にIさんが登り終え、ビレーを解除していよいよ緊張は極みに達する。
ピッケル、バイル、アイゼンを岩と氷に引っかけ這い上がると途中でザイルが引っ掛かり上がってこない。
どうも変だと思って少し下がると途中にランニングが取られていたのに気付かなかった。
20m程攀ると二人が待つテラスで更に陵を1P登ると一息付ける斜面だった。
山頂は目と鼻の先だった。
写真を撮って視界の無い中を上富良野岳へ向った。
強い向かい風にも関わらずS庭さんの歩くペースは速く遅れず追いて行くのが精一杯だ。
夏道の鉄杭が飛び出て良い目印だったが上富良野岳の標識が雪を被って気づかず過ごしてしまう。
行きつ戻りつして地図を取り出しD尾根へ向かうと薄ぼんやり八ツ手岩が見え出す。
S庭さんが先に降りて合図を出しホット胸を撫で下ろして後に続いた。
化け物岩手前の下降ポイントから過日雪崩れた斜面を覗くと風で飛ばされたか雪は少なかった。
沢へ降るとデブリの跡に旗が立ち、亡くなられた4人のご冥福を祈って手を合わせた。
雪陵登攀は酷い寒さで大変だったが終わってみると充実感が濃かった。