週末はH氏のお誘いで定天の東尾根に話が決まり思いがけぬコースに少なからず血が騒ぐ。
山頂から見える岩峰や岩壁が相手では自分一人では無理と諦めていただけに何とも嬉しい。
定天に向かう途中で黒々と突き出たいつもの岩峰が望まれた。
ルンゼにタスキのように掛る雪渓が4月に誘いを受けた「ニセワラジルンゼ」だと聞かされ少々ビックリする。
まさにファイトイッパツの領域だが東尾根ならあれ程じゃ無いだろうと高を括っていた。
熊の沢登山口を過ぎ天狗沢まで来て入山口を捜すが何処もブッシュに覆われている。
最近は夏場に登る人がいないようで廃道同然と聞いていたが想像以上の荒れ様だ。
とりあえず左岸から入ってすぐ右岸に渡り暫く沢沿いに進むとブッシュに覆われた踏み跡を見つける。
急登のジグを切って尾根に上がると藪の状況が幾分好転するが踏み跡かどうかの判別さえ難しい。
標高650m付近で尾根が一部崩壊し日の当たるガレ場がちょうど出始めのウド畑になっていた。
東からの尾根が合流すると藪の間から切り立った特異な岩峰が望まれた。
はじめ山頂かと思ったが見える岩峰は東稜よりずっと下にあるローソク岩だった。
ようやくブッシュを抜け見晴らしの良い岩場を伝って「憩いの花園」で休憩を入れる。
狭い岩場にへばりつく様に数種の花が咲き心休まる一時である。
それにしても末端に小さく見えたローソク岩がこんなに大きく聳え立っているとは!・・この山の奥深さを少し知ったような気がする。
基部はザレの急斜面で下は天狗沢へと落ちている。
慎重にトラバースしながら右へ回るといよいよ取付きのルンゼで雪渓が残っていた。
既に結構な高さがあり足場は決して良いとは言えない。
山頂まで200m位か? 何ピッチかかるか検討も付かぬが覚悟を決めハーネスを付ける。