登山の端境期、アポイ岳の川向に位置する小さな無名峰を往復した。
急峻な日高山脈の名残かこの界隈の山々には低山ながらも登頂意欲をそそる山容が目に留まる。
地元で天狗岳と呼ばれるこの山もまた然り、海沿いの道路から眺めるとそうでもないが主稜線を縦走する途中から、
またマイナーな山から見える小さな尖がりが気になっていた。
当初、幌満岳△685へはダイレクトに突き上げる南西尾根を予定したが、
大きな採石場の山肌を見上げて唖然、いきなりルート変更を余儀なくされる。
山の西側に流れるルサキ川沿いに林道が入ってるので望洋△471mを経由して登ることにした。
川岸に車をデポし荒れた林道を出発する。
葉の落ちた雑木林はまるで下草が刈られた様にすっきりし、
鹿の骨がいくつも転がってちょっと奇妙な雰囲気だ。
そして地図に無い枝分かれした林道を辿ると望洋らしき丸い頂が見えてきた。
林道からコンパス切って適当に上を目指す。
冬の季節風の影響で背の低いカシワの樹林帯を通過、海風に向って伸ばした枝にちりちりの葉っぱが残って面白い。
これを越えると広々としたミヤコザサの斜面にこれまた背の低いゴヨウマツが点在する。
ふと足元にクマ撃退スプレーが・・・厄介な物を拾ってしまった。
カンバの枝にテープが結ばれ、どうやらこの山を登りにくる物好が他にもいるようだ。
振り返ると留崎漁港からうっすらもやの掛かる先に襟裳岬が望まれ、
更に少し登った中腹からは豊似岳を始め二観別岳や袴腰山などマイナーな南日高末端の山々に見とれる。
そしてなだらかな望洋△の頂稜に到着、
ゴヨウマツとハイマツが入り混じる一番の高みで三角点を探す。
鼻のような先端まで行くが見つからず、ただ眼前に静かな太平洋が広がっていた。
さて次の幌満岳に向かうとする。
背の低い笹を踏んでポコを越えると緩やかな広尾根の先に優しい表情の山容が望まれた。
つんと尖ったイメージだったが森林が薄いせいかまるで高山の趣である。
奥には日高の山々が見え隠れし山頂からの展望が待ち遠しい。
尾根通しに笹原を辿ると二つ目のポコでカンバとハイマツが立ち塞がる。
東面に廻り込むとテープや枝に鋸目の入った登山道らしきものが延びて?
これで藪漕ぎの必要がなくなったようだ。
振り返ると平坦だった望洋が小さな三角で望まれ、早くも海からのガスで霞んでいる。
これはまずい!先を急ぐ。
背の低いハイマツと岩陵の尾根は北側が急な谷斜面になって、
目指す頂が指呼の間に望まれるがなかなか近くならない。
当初予定した南西尾根はびっしりハイマツに覆われ止めて正解だった。
そして三角点の埋まる幌満岳に到着、なんとか間に合った!
北に突き出す頂からは遮る物のない大展望が待っていた。
向こうの山からこの頂きが見えたのだから眺めが良いのは当たり前だが、
狙い通りの展望にヤッターと心の中で叫ぶ。
写真には納まり切らないが南から順に、
豊似岳〜美幌岳〜広尾岳〜ピロロ岳〜ポン楽古岳〜楽古岳〜十勝岳〜オムシャヌプリ〜野塚岳〜トヨニ岳〜ピリカヌプリまで
溜息の出るような南日高山脈の大パノラマが広がっていた。
こちらは左からアポイ岳〜吉田岳〜ピンネシリの山塊で稜線が青空にくっきりと映えている。
険しく急峻な山容はどれも1000mに満たない山に見えず、中でもピンネシリの端正な頂が一際目立つ。
眼下には幌満峡と呼ばれる深い渓谷が一端を覗かせ未知なる山域に思いを馳せた。
コルから最短で林道に戻り、気分良く歩いてたらパンという鉄砲の音にはっとする!クワバラクワバラ・・。