北日高を代表する峰々、エサオマントッタベツ岳、幌尻岳、戸蔦別とそれぞれのカールを巡るオートルートを計画した。
このルートはそれなりに知られているが今やる人は稀で広大な秘境を独占できること請け合いである。
目玉は戸蔦別川と新冠川を遡行して4つのカール(エサオマン北東カール・エサオマン北カール・七ツ沼カール・戸蔦別カール)
を巡ることだが何れもクマの巣だけにバッタリ鉢合わせは勘弁願いたい。
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エサオマントッタベツ川の滑はいつも以上の迫力 携帯が通じる御馴染みのエサオマン北東カールに到着 熊の掘り返しがやたらと多いエサオマン北カールに下る
8/18N 小雨 23時、Kitaさんと戸蔦別小屋に到着する。
車が1台止まって東京の社会人グループ4人が停滞中だった。
15日から同じルートを予定していたらしいが雨で水が引かず明日帰ると言う。
4日間もよくこの薄暗い小屋でねずみと同居していたものだと同情するが、
傍を流れるピリカペタヌ川から轟音が聞こえ他人事ではなさそうだ。
気になって様子を見に行くと小橋の上にまで水が溢れ明日が思いやられた。
8/19 曇り時々晴 Sugaちゃんと合流し6号堰堤から林道を出発する。
増水気味のエサオマントッタベツ川はただの段差が小滝に変わり渡渉に気を遣うがガケの沢出合いまでの辛抱だった。
途中でカワウソを見つけるなどしてほぼ予定通り雪渓が残る北東カールに到着する。
高曇りで視界が効きJPからは日高の展望を楽しみながらエサオマントッタベツ岳山頂に到着する。
さらに踏み跡を辿ってナキウサギの鳴く北カールへ尻餅付きながら草付きを下った。
熊の掘り返しが散見されるが肝心の主は留守のようだ、テン場脇の雪渓で水が取れてありがたい。
テントの中で玉葱スライスに塩胡椒を振りかけ一杯やると漸く落ち着いてきた。
熊のことなどすっかり忘れ、みそホルモンを焼いて舌鼓を打ち、カレーライスでお腹一杯になる。
日が暮れると星が瞬き、夜中は冷え込んでシェラフカバーだけでは寒かった。
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エサオマン入ノ沢の10m滝、苦労して下りホットする 新冠川c960付近から出てくるちょっと厭なゴルジュ帯 つるんとした岩盤が多く本流出合いまで気が抜けない
8/20 晴れ時々曇り 2009/9に遡行したエサオマン入の沢は滑と滝の美しい渓だったが、
山崩れの跡が散見され沢中は倒木で悲しい状況になっていた。
当時苦労して右岸を巻いた10mの滝はすんなりノーザイルで下降でき、神威岳から流れる沢に合流すると倒木が消え元の綺麗な新冠川に戻っていた。
程なくゴルジュ帯へ突入しザイルを数回出して抜けると沢が開け・851より新冠川本流となり、ここから七つ沼までは初めての遡行でウキウキする。
雨後でたまたま水量があるものの水が澄み足元に魚影が走るとても綺麗な沢だ。
やがて続々と現れる滝、高巻き、巨岩、函、釜などもう数えていられない。
滝から水が噴流し釜が深くて見るからに登れぬものが多く、高巻きに結構時間を費やする。
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平穏だった新冠川本流も束の間、滝滝・函函を遡る 背丈の数倍以上ある巨岩がごろごろして遡行を拒む 綺麗なコバルトブルーの釜の奥に滝、これの繰り返し
c1040とc1140の左股は共に幌尻岳東カールへ至る直登沢で興味をそそる。
この間の本流は数メートル台の巨岩がごろごろして泣かされ、
c1200過ぎまでは顕著な函地形の中に次々、滝と釜が続き脱出するまで気の休まる暇がない。
やがて軽快な小滝群を登って急な沢を詰めると一気に減水しカールの入口へと導かれた。
有名な七つ沼も下から登るとブッシュで見通しが効かずやや感激の薄いカールである。
テントが3張りあって少し離れた砂地にテントを張った。
人を恐れぬ雄鹿が一匹、テントの傍から離れず、朝起きて沢靴を持っていかれたら事なので追っ払う。
五目ワンタンおじやは量が増え味もなかなかでいける。
曇空で昨夜の寒さはなく、替えの衣類を持ってないSugaちゃんを始めみんな熟睡する。
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登るに従い七つ沼がみるみる小さくなり名残り惜しい 秋を思わせる空の下、北日高の山並みを堪能する 戸蔦別Bカールに湧き出る水はこの上なく美味しい
8/21 晴れ後曇り 幌尻岳は皆な何度も登ってるのでパスすることにして一番遅く七つ沼カールを出発した。
従走路へ登る急な道脇にエゾツツジとウサギギク、イワギキョウが咲き、休む度に七つ沼が小さくなっていく。
空は既に秋の気配で今日は帰るだけと思うと気が楽である。
戸蔦別岳からは遮るものがない360度の眺望が待っていた。
1967峰とエサオマンの鋭鋒ぶりは甲乙付け難く、盟主幌尻岳の脇に中部日高の山並みが遠くまで望まれた。
Aカールを下降する予定だったがコルまでのブッシュを敬遠しあんちょこにBカールに変更、
落石にビクビクしながらガレの急斜面を下る。
ナキウサギの声を聞きながらカール底に達すると思わず万歳したくなるようなカールバンドに囲まれ気分爽快である。
冷たい湧き水で喉を潤し、戸蔦別川を下降した。
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下降を始めるや見応えある大きな斜滝が幾つも現れる 苦労してへつったこの下にゴルジュ滝が構えていた 巻き道は明瞭でご丁寧にコーステープまで付いている
右から左から支流を集め、程なくCカールから大きな滝が合流し結構な水量になる。
アイヌ語で「トッタ」とは函状になっている川を意味する通り、黒光りする大きな斜滝や滑、函が幾つも出てくる。
滝の迫力は相当なものだが通常なら結構面白い遡行が期待できるかも知れない。
これらの巻き道にはご親切にコーステープが付けられザイルを出すことなく坦々と下る。
やがてゴーロになって漸く滝と釜から開放されたようだ。
左岸に踏み跡が八の沢まで続き、そこから古い作業道と林道を1時間近く歩いて車に到着する。
ボロボロに疲れた体で嵐山の湯に浸かり、長い沢旅が終わった。
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