後志地方は天狗と付く山が多く、積丹半島だけでも4座あるがその中で大天狗山はアプローチの難しい山である。
断崖が連続する海岸の奥に佇み、高い山に登って初めてその端正な姿を見ることができる。
天狗と言う名にも引かれるがこの山はどこか孤高を誇っているようで気になる存在である。
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道の駅「おすこい神恵内」を過ぎてほどなくノット川とオブカルイシ川の間に取り付く尾根がある。
尾根と言っても崖にしか見えないが、取りあえず「あんない展望公園」に車を止める。
ここは陸の孤島と称された廃漁村「オブカル石」があった所で高台には小学校跡の石碑と海を眺める村人の像が立っていた。
その碑文に往時を偲ぶものの、像の色合いが景色とアンマッチって感じだ。
さて尾根は見上げる果てまで雪が無く、折れそうな心を奮い立たせ登ってゆく。
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尾根は落石の厭らしい急斜面で帰りが思いやられた。
ほぼ海抜0mから250m登るとようやく雪面が現れほっとする。
台地状の尾根には雪がたっぷり残って、時々熊避けの声を発しながら歩く。
やがて500mの尾根に出ると今まで樹林越しだった大岩峰がオブカルイシ川の対面に望まれた。
黒々とした鼻の様に目立ってこれが天狗と呼ばれる所以ではなかろうか、
そして尾根の奥に山頂と思しき白く小さな頂が望まれた。
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688ポコ手前より振り返ると尖った能蘭山をバックに青い海が広がってなかなか良い眺めである。
それにしても一筋縄で行かぬ複雑な尾根だ、地図にない谷が出てくるなど相当入り組んでいる。
もし下りで尾根を外して崖にでもぶち当ったら大変な目に合いそうだ。
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そしていよいよ山頂が視界に入る。
このルートは出だしと最後が手強いぞと思っていた通り、カールバンドの様な壁が現れた。
果たして登れるだろうか?
近づきながら何処かに弱点はないかと見渡すが地図を見てもど真ん中を行くしかなさそうだ。
照り輝く斜面にどきどきしながら歩を進めた。
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遠目には立って見えた斜面も近づくとそれなりの斜度で一安心する。
アイゼンピッケルを装着し、硬い雪面を蹴り込みながら一歩ずつ登って稜線に達した。
天狗だから最後に岩塔とか出てくるのではと思ったが立木一本ない緩やかな頂稜が見えていた。
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そして頂上で展望が一気に開けるというドラマチックな感動が待っていた。
真っ先に目に入ったのは積丹の青い海で眼下に神威崎(写真左)や積丹岬など凄いパノラマが広がり、
方や青空のもと余別岳を始めとする真っ白な山々に思わず感嘆の声が上がった。
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正面の山があまりに白いので積丹岳かと思ったが主峰余別岳だと判明、
何処から見てもどっしりと貫禄のある山である。
ポンネアンチシ山がすぐ右奥に重なって殆ど一体化している。
右の大きな山は珊内岳でいつもの平らな頂稜ではなく立派な姿を見せていた。
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珊内岳の右奥には稜線伝いにガニマナコと屏風山が小さなポコのように並び、
中央の白い896ピークの右に赤石山が頭を覗かせる。
さらに小さく尖がった能蘭山や鉞山の上に日本海が広がり、狩場・大平・幌別・ニセコの各山群が島の様に浮んでいる。
登頂の達成感と360度の眺望に満足して山頂をあとにした。
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確か定山渓天狗山はアイヌ語で「キトピロの多い山」だったと思うがこちらの天狗も負けてないようだ。
雪が融けたばかりの斜面に早々と上物が出ていた。
最後の急斜面では落石を起こさぬよう気を遣い、眼下にようやく窓岩が見えてほっとする。
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<昨日の 寿都・幌別岳(スキー) はこちら>