夕張岳と芦別岳は直線で16km、奥深い山域に登行意欲がそそられる。
ここは鉄道によるアプローチが可能なため古くから岳人が歩いたルートでかねがね縦走したいと思っていた。
天気の加減でGWに計画するのはこれが3度目だ、待たされた甲斐があり今回は晴れマークが並んで嬉しい。
この写真はたまたま同じ日に狩勝峠から1040m無名峰(奥佐幌岳)に登った知人が送ってくれたもの。
右の芦別岳から左の夕張岳まで歩いた稜線が一目瞭然で、また山の並びがいつもと逆で面白い。
4/26(土)晴れ 前夜、金山登山口に1台デポして太陽の里キャンプ場でC0、遅くまで飲んで3時起きは辛かった。
快晴のもと4時過ぎ新道登山口を出発、程なく一面の雪となるが気温が高く早くもズッポが始まる。
ワカンを付け玉の汗を掻きながら標高を稼ぐ、雪は締まってきたがカメの歩みが続く。
やがて屏風岩、対岸に夫婦岩が見えてくる。
アルペン的な芦別岳を仰ぎながら十勝連峰や日高の山並みを背にとても爽快である。
そしてEPの出番もなく急斜を登り切って芦別岳山頂に到着した。
yomogiさんは芦別岳で晴れたのが初めてとのこと、遠い夕張岳に目が点になっていた。
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芦別岳からポントナシベツ岳(ポン・トウニ・ウシ・ペツ 小さな・柏木の・多い・川)を望む、
地図に名前が無いのが可哀想なくらい立派な山容である。
山頂にはかつて夕張岳から縦走中に春の嵐で消息を絶った3人の乙女の慰霊碑があると云う。
奥の丸い山が鉢盛山だとすぐ分かるが、その手前の稜線が随分切れ立っている。
新道と旧道から登ってくる豆粒のような人影を見て芦別岳を後にする。
山頂の南端から灌木の出た斜面を下ってポントナシベツ川の源頭をトラバースすると、
後ろに芦別岳の頂上岩塔が砦の様で面白い。
コルから見上げるポントナシベツ岳(左)は意外に急峻で次第に白い尖がりが迫ってくる。
そしてポントナシベツ北峰でEPになり初ピークを踏んだ。
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ポントナシベツ岳からは360度の眺望を得る。
普段なかなか見ることのできない芦別岳(右)の裏側を始め、
響きの良いシューパロ岳(左)や夕張中岳(中央)など険しい山々に囲まれ圧巻である。
さてポントナシベツ岳ともお別れだ。
初ピークを踏んだ喜びとあまりの眺望の良さに手を合わすのを忘れてしまう程だった。
ポントナの南面は背の低いハイマツに覆われ、仮に夕張岳から縦走して来たら大変である。
眼下には褶曲山脈の特徴なのか恐竜の背の様な稜線の先に鉢盛山、
ずっと遠くに夕張岳が見えていた。
さてそろそろテンバが気になってくる。
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12時間行動でくたくたになった頃、・1422手前に窪地を見つけC1とした。
左に夕張岳や夕張マッターホルン、右にシューパロ岳を望む、
静かな後芦別山塊の奥座敷って感じである。
ところが意外に携帯が通じて驚く。
「三本立ってるわ」と言うと、寺さんが「たった三本か、俺は自分の入れて四本だ」
このローケーションでいつもの下ネタかい、酔いが進み20時過ぎ就寝する。
27日(日)晴れ 4時半出発、雪が締まって昨日より歩き易いがまだ眠った体にザックが重い。
細い岩尾根は西斜面を一気にトラバースしてゆく、ピッケルなんかただのお荷物だったようだ。
鉢盛山の登りは意外に手応えあってワカンの爪を効かせながら一歩ずつ登ってゆく。
傾斜が緩んでくるとハイマツと灌木が覆い、雪を繋ぎながら山頂を目指した。
鉢盛山の山頂に到着、ピンクテープ一つない平べったい頂きである。
振り返ると芦別岳が遠くなり、ポントナシベツ岳が何時の間にかどっしりした山容に変わっている。
縦走ルートのほぼ中間にある1415峰(通称:夕張マッターホルン)がまだずっと先に見え、
夕張岳がほんの少し近づいたと言う程度である。
急峻だった稜線は少しずつ優しさを帯び、手つかずの原生林が広がる光景に暫し見惚れる。
その原始の広尾根も標高が下がり気温が上がると必然的にずっぽで難儀する。
こんな時、スキーがあったらなぁーと思いながら体力勝負の持久戦となる。
だが昨日の芦別岳の様な一本調子の登りがない分かなり楽である。
広大なタンネをちんたら進み巨大な岩峰が聳える1415峰の基部を通過する。
このピークは見る角度によって随分と姿を変える山で、ここからはマッターホルンの様な端正さはなかった。
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当初は・1303付近を二日目のテンバとし吉凶岳をピストンする積もりだったが、
山容がいま一つなのと意外に時間が掛かりそうで割愛した。
やがて右前方に滝ノ沢岳が初め前岳かと思えるほどの鋭鋒で望まれ、
そして夕張岳がいよいよ射程圏に入ってくる。
明日は雨予報も出ていたので、いっそ今日中にピストンできないか?など考えながら歩いた。
一見近そうな夕張岳だが今日中にピストンするのは無理、だが出来るだけテンバは先に延ばしたい。
釣鐘岩まで2kmほどの場所にフジツボの様なポコの傍に窪地を見付けC2とした。
テンバからは夕張岳がぐっと大きさを増し、ガマ岩と釣鐘岩がカエルの目に見える。
吉凶岳(右端)も遠くなってしまった。
夕日に染まる景色を眺めながら一杯やり、各自適当にα米でお腹を満たす。
鮭の塩引きを入れた北さんのお茶漬けが一番美味そうだ、自分はいつもの具なしカレーで済ませる。
携帯は流石に圏外だった。
夜中は風がテントを叩き、雨か雪がパラパラと音を立て停滞を覚悟した。
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28日(月) 4時45分、強風とガスだが雨が止んでるので出発する。
視界は100mほどで南西から次々と厚い雲が流れ込んでくる。
やがて日が昇ると雲の切れ間に青空が垣間見える。
何となく晴れそうな予感、薄ぼんやり夕張岳が姿を見せるや、
みるみる青空が広がって前岳やガマ岩など感動する景観が広がり出した。
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熊ケ峰を回り込んで「吹き通し」に出ると登山路の雪が飛ばされ地面が露出していた。
ユウバリソウはこんな環境で生きてるのか、標識の傍には夏場に使われたロープがデポされていた。
今は風と寒さでイメージすら出来ないが一気に雪が融けて緑の山になるのだろう。
雪田に穴を掘ってザックを下し、空身で山頂に登る。
風が勢いを増し、耐風姿勢を取りながら神社の窪地に出ると祠と鳥居が雪の下だった。
そして標識が横たわって意外に風が弱いピークに到着する。
遂にやったー、芦別岳と夕張岳の稜線にトレースを刻んだ。
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夕張岳山頂から冷水沢方面を見下ろす。
前岳と滝ノ沢岳が対峙し、ガマ岩、釣鐘岩、熊ケ峰など見覚えのある風景が広がっている。
緑や紅葉に覆われた景色も素晴らしいが眺望が得られるとは願ったり叶ったり!
展望はおろか登頂すら危うい天気だっただけに嬉しさも格別である。
そして芦別岳からの縦走ルートを眺める。
朝日を浴び黄金色に輝く様は感無量の一言に尽き、登った山々や辿った稜線を目で追う。
ここから見える芦別岳は殆どがポントナとの重なりだったか、そして今になって右端の吉凶岳に未練が残る。
夕張中岳、夕張マッターホルン、シューパロ岳などいつもと違う向きから眺めるのも楽しかった。
荷をデポした「吹き通し」から夏道の数十m下を大トラバースして1400mで金山コースに合流した。
夕張岳の急な大斜面を思うまま下って行けるのは残雪期ならではで、ダイナミックな景観が広がっている。
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あとは下るだけと思っていたら小夕張岳なる渋いピークが待っていた。
登山道と関係の無い黄色いプレートが目に留まってつい鹿道を進んでしまう。
その途中で北さんの鼻がネギに反応、足元が畑だったがまだ小さかった。
50m程下ったところで誤りに気が付いて登り返す。
正規なルートに戻ったものの雪の付いた岩尾根はなかなかデンジャラスだった。
もし縦走をスキーでやるとしたら夕張岳から芦別岳に抜けることをお勧めしたい。
雪解けの進んだ林道をテクテク11時間半掛かって車に到着する。
どの顔も達成感で一杯、生涯の思い出となる山行だった。
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